Research Abstract |
本研究の主要な目的は,日本人における自己認知を探ることである(当初の目的は,自己認知と精神的健康との関連性を探ることであったが,精神的健康に限定するのではなく,広い意味での適応や学業達成との関連性も検討することによって,日本人の自己認知を探ることにした)。 本年度においては,大別すると2つの研究を行った。まず1つ目は,小学生を対象にして,自己認知(ポジティブ・イリュージョン)が子どもの適応(ストレス反応,攻撃行動)に与える影響についての縦断的な研究を行った。その結果,ポジティブ・イリュージョンは,ストレス反応が高い子どもにおいては非常に有効である(ストレス反応が減少する)が,攻撃行動が高い子どもにおいては有害な影響を与える(攻撃行動がさちに増加する)という,適応的な結果と不適応的な結果の両方を備えもつことがわかった(→現在,成果を雑誌に投稿中である)。 2つ目は,前年度に引き続き,自己認知に重要な影響を及ぼすと考えられる"社会的比較(自己と他者を比較すること)"に焦点を当てて,社会的比較が中学生の学業達成(学業成績の向上)に及ぼす影響について検討した。その結果,社会的比較が中学生の学業達成に及ぼす影響は,何を比較するのかといった比較の対象(成績,勉強の方法など)や,教科(数学,国語)および学業コンピテンスといった動機づけの高さによって異なってくることがわかった。(→現在,成果を雑誌に投稿中である)。 さらに,本年度においては,前年度に行った研究結果を学会にて発表するとともに,論文を執筆した。
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