Research Abstract |
本研究の主要な目的は,日本人における自己認知を探ることである(当初の目的は,自己認知と精神的健康との関連性を探ることであったが,精神的健康に限定するのではなく,広い意味での適応や学業達成との関連性も検討することによって,日本人の自己認知を探ることにした)。 本年度においては,大別すると2つの研究を行った。まず1つ目は,日本人における自己と関係性の捉え方を探った。先行研究(外山,2002)によると,われわれ日本人においては,自分自身という個人を対象として直接的に自己をポジティブに評価するよりも,自分も含めた人間関係を対象として間接的に自己をポジティブに評価しようとする関係性高揚認知が強いことが明らかにされている。そこで,本年度においては,同じ目標に向かう初対面同士の関係性に焦点を当て,人為的・一時的に割り振られた初対面の人との関係性においても,関係性高揚認知が見られるのかどうかを検討した。その結果,日本人においては,関係性高揚が見られる領域(課題)や側面が異なることが示された(→現在,成果を雑誌に投稿中である)。 2つ目は,自己認知に重要な影響を及ぼすと考えられる"社会的比較(自己と他者を比較すること)"と日本人の自己認知として多い"悲観主義"を取りあげて中学生を対象に検討した。まず社会的比較においては,新奇な環境においては(本研究では,中学1年生においては),社会的比較が学業場面における遂行において重要であることが実証された。つまり,中学1年生は,自分よりも幾分優れている同性の友人と学業成績の社会的比較を行い,そして,こうした自分よりも優れた友人と比較することが学業成績の向上につながることが示された(→現在,成果を雑誌に投稿中である)。そして,日本人に多いとされる悲観主義者においては,その対照的な楽観主義者と比べて,決して学業的に劣っていないこと,両者ではパフォーマンス(本研究では,学業成績)につながるコーピング(目標の追求の仕方)が異なること,がわかった(→現在,成果を雑誌に投稿中である)。
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