2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J07490
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤本 太美子 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 史料論 / カルチュレール / アングロ=ノルマン王国 / ラ・トリニテ修道院 / 所領調査 |
Research Abstract |
本研究における本年度の主要な研究実績は、研究史の整理と史料検討である。 1 研究史整理:英・仏の中世盛期社会経済史および国制史に関わる近年の仕事を収集し、研究動向の整理に着手した。この作業においては、アングロ=ノルマン王国期社会を対象とする研究がやはり国制史偏重であること、また社会経済史では当該期イングランドとノルマンディをともに視野に入れた研究がほとんどみられないことを確認しつつある。とくに、クロス=チャネル・エステイト研究では依然として世俗領の検討が主流であり、本研究が目指すような教会領の検討は相対的に遅れているという傾向の検出は重要な成果の一つである。なおこの作業は最新の傾向を把握し続けるべく今後も継続して行うことになる。 2 史料分析:昨年度に引き続き修道院文書集・関係書文書・所領調査などの分析・整理を進めているが、本年度はとりわけ13世紀ノルマンディ所領調査(『1257年の宣誓記録』)の読解・データ整理を行った。また本年度夏季の渡仏時には、資料・地誌調査およびカン大学のF.Neveux教授とV.Gazeau教授との意見交換など、史料分析にとって重要な成果を得ることができた。さらに、昨年に引き続き中心的に考察してきたノルマンディの主要所領ウィストラム(Ouistreham)の史料分析結果を取りまとめ、従来十分な史料の検討なしにノルマンディ公の港の存在に帰結させられてきたこの集落の社会経済的発展は、漁業を中心とした在地的な経済活動およびそれに基づいたラ・トリニテの所領収入確保・経済振興策によるところが大きいことを明らかにすることができた。なおこの内容は、史学会第101回大会において研究発表を行い(2003年11月8日、東京大学)、その際の討論を活かしつつ論文を完成させた(裏面研究発表欄参照)。
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