2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・ディアスポラの地政学と「非合法」移民政策の国際比較研究
Project/Area Number |
03J07535
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
挽地 康彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | グローバリゼーション / 移民政策 / 社会政策 / 福祉国家 / 「非合法」移民 / ディアスポラ / 社会的排除 |
Research Abstract |
本年度は、日本に在住する外国人への社会政策と入国管理政策が、今日どのような関係にあるのかという点を中心課題に据えて研究を進めた。在住外国人が抱える保健・医療・福祉に関する問題は、多岐に渡るばかりでなく、問題によっては深刻かつ急迫している。したがって、まず現状を詳細に把握すべく、先行研究・統計資料等の文献調査のほか、外国人の集住する各自治体(東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡県)へのフィールドワーク、多数のNGOスタッフへの聞き取り調査を通じて、在住外国人への社会保障制度の変遷と現行制度の仕組み、厚生行政と各自治体の対応の違い、NGOに寄せられる相談内容等を検討した。 その結果、日本における在住外国人への社会保障制度は、政府レベルではある程度整備されつつも、(1)依然として外国人の居住実態との間に乖離があること、(2)自治体によってその運用の仕方に格差がみられること、(3)社会保障が入国管理行政のプラグマティックな政策に呼応していること、などが明らかになった。本年度の研究課題に即して言えば、とりわけ(3)では、例えば「非合法」移民(外国人)が適用可能な社会保障制度でも、自らの「不法」という地位への負い目とそれに起因する「通報」というリスク負担等から利用できない現状があり、さらに度重なる入管法の改定が「非合法」移民を社会保障からますます遠ざけるという、入国管理政策と社会保障政策との間に制度的矛盾があることを吟味した。本年度における上記の研究成果は、学術雑誌『社会分析』31号掲載(2004年3月発行予定)の論文「入国管理としての社会保障?:グローバル化のなかの在住外国人の社会保障」としてまとめた。 なお、2004年2月末からの海外調査(ロンドン)では、日本と英国の移民に対する社会政策比較研究を行う予定である。
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Research Products
(1 results)