2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J07556
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二村 裕一 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 耐熱鋼 / マルテンサイト / Cu / 焼入れ性 / 機械的性質 / 強度-延性バランス / 焼戻し軟化抵抗 / 転位芯拡散 |
Research Abstract |
申請者は、マルテンサイト系耐熱鋼の高温域での強化手段として、従来鋼で利用されていた炭窒化物粒子とは析出サイトが異なるCu粒子の複合析出を提案し、Cu添加によりクリープ強度が大幅に改善されることを実証してきた。しかしながら、これまでの研究では、Cuを強化元素として利用した基礎研究にとどまっており、Cu粒子と種々の炭窒化物粒子による強化を複合加算させたマルテンサイト系耐熱鋼について、実用化を見据えた特性評価は行っていない。そこで今年度は、実用化のための材質制御技術を確立することを目的として、機械的性質を含めた諸性質に及ぼすCu添加の影響を調査した。 加工フォーマスターにより相変静点を測定した結果、Cuの添加によりマルテンサイト変態の開始温度が低下し、そのことに起因して耐熱鋼の熱処理過程で重要となる焼入れ性が改善されることを明らかにした。また、マルテンサイトからオーステナイトへの逆変態の温度は、Cu粒子の析出によりCu量に依存せず一定となっており、これまでの強化元素とは違い、Cuは焼戻し処理温度を高温に設定できる特徴も有していることが示唆された。一方、焼入れたままのFe-Cr-Cu三元合金において、Cuの添加が室温での延性をあまり損なわずに降伏強度を上昇させるため、結果として強度-延性バランスが大幅に向上することが明らかとなった。さらに、その後焼戻した試料においても、耐熱鋼での一般的な析出粒子である炭化物(M_<23>C_6)に比べてCu粒子の成長が遅いため、ナノCu粒子による析出強化により優れた焼戻し軟化抵抗を示すことが確認された。また、その際のCu粒子の成長機構がCu原子の転位芯拡散によって支配されることを見出した。
|
Research Products
(1 results)