2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J07566
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川崎 光宏 新潟大学, 工学部, 助手
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Keywords | 乱流 / 大自由度力学系 / 熱力学形式 / SRB measure / 結合写像格子 / 不安定周期軌道 / 大偏差統計 |
Research Abstract |
高温プラズマ乱流などの流体乱流や反応拡散系、生態系や経済現象の要素(一本の木や一人のディーラー)に基づくモデルなど、大自由度力学系として記述される系の巨視的性質を理論的に議論しようとすると、いつも、系を記述する基礎方程式の持つ非線形性と大自由度性という共通した困難によりつまづく。 しかし、同じ大自由度力学系であるはずの平衡状態にある物質については、これらの困難を乗り越えることに成功した体系がある。この平衡統計力学では、状態の出現確率測度を用いて巨視的物理量の解析を行う。厳密な確率測度(自然確率測度)を用いようとすると、上と同様に、非線形・大自由度の基礎方程式(Newtonの運動方程式やSchroedinger方程式)の解析の困難に出会う。しかし、系の巨視的性質にのみ注目すれば、大数の法則により、基礎方程式の解析無しに構成できる特異性の無い確率測度から巨視的物理量の期待値を正しく計算できる。 同様に、もし、大自由度力学系の巨視的物理量の期待値計算に関し自然確率測度の代わりになる、より扱いやすい確率測度を得ることができれば、基礎方程式を解析することをスキップして巨視的物理量の観測値を予測することができるだろう。 そこで、我々は、1.数値的に発見された一本の不安定周期軌道(UPO)から乱流統計が分かる、2.SRB measure、3.周期軌道展開の3つの手がかりをもとに、巨視的物理量の期待値計算に関し自然確率測度の代わりになる確率測度を推測し、もっとも簡単な大自由度力学系である結合写像格子に適用した。その結果得られた状態アンサンブルから、平均量である巨視的物理量の期待値がアンサンブル平均として得られることが分かった。本研究により、高温プラズマ乱流を定量的に解析することのできる統計力学構築への実現可能なルートが開かれたと期待される。
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