2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘム蛋白質マトリクスの性質を生かした反応活性種の新規合成とその反応性の探索
Project/Area Number |
03J07571
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 貴史 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 再構成 / ミオグロビン / ポルフィセン / 酸素親和性 / ルテニウムオキソ錯体 / NADH / 水素引き抜き / 熱化学解析 |
Research Abstract |
(1)これまでの研究において、鉄ポルフィセン錯体で再構成されたミオグロビンが非常に高い酸素親和性を示すことを見いだしており、その原因を探ることが次課題となっていた。そこで、今年度は、昨年度に引き続いて、この再構成ミオグロビンについて、更に各種分光学的測定を詳細に行い、鉄ポルフィセン錯体を有するミオグロビンの高い酸素親和性は、酸素錯体におけるFe-O_2の結合様式のうち、Fe-O_2σ結合が錯体自身の性質により安定化されるためと結論づけた。このことは、鉄ポルフィセン錯体が、ポルフィリン類似体のなかでもユニークな性質をもっており、タンパク質マトリクスという特異な環境下で、それが最大限に発揮された結果であると考えられる。本研究の成果は、すでにJournal of the American Chemistry Society誌に論文として発表した。 (2)シトクロムP450などの酸化酵素では、鉄オキソ錯体が活性反応種として知られている。その反応性を明らかにするため、ポリピリジルルテニウムオキソ錯体を鉄オキソ錯体のアナローダとして用い、NADH類縁体との反応機構を詳細に調査してきた。本年度は、種々の速度論・生成物解析の結果より、NADH類縁体は、典型的なヒドリド(H^-)ドナーであるにもかかわらず、ルテニウムオキソ錯体による酸化反応では、水素原子(H・)引き抜きによって反応が開始されると結論づけることができた。この反応の熱化学解析によると、本反応系は、ヒドリド移動、水素原子移動ともに、同程度の自由エネルギー変化である。したがって、本研究における実験結果は、ヒトリド移動に比べて水素原子移動が固有的に有利な反応経路であることを示しており、金属オキソ錯体によって反応を触媒している酵素の反応機構を解明する上で有用な知見となるものである。本研究の成果は、Inorganic Chemistry誌に受理され印刷中でる。
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Research Products
(4 results)