Research Abstract |
本研究では,奄美大島において,1)外来種と在来種間の相互関係を特に間接効果に注目して明らかにし,2)多数の生物を対象に出来る食物網モデルを構築することによって,在来生物群集へのマングース駆除の影響を予測することを目的としてきた. 今年度は,まず,これまで同様,1)8カ所の調査プロットにおいてクマネズミの標識再捕獲とセンサーカメラによる生息密度推定,2)各季節の食性を知るための胃内容物分析,3)クマネズミ以外の様々な生物のセンサスを行った.次に,この結果をもとに,おおまかな種間関係を明らかにし,野外実験を行った.さらに,最終的にマングース駆除の影響を予測する予定であったが,昨年度に引き続きクマネズミは常に低密度であり,適切なパラメータをとることができなかったため,予測には至らなかった. クマネズミが低密度を維持したのは,昨年に続き,秋の主要餌であるシイの実の不作が影響したと思われる.また,昨年同様に,春には多くの個体が定住せずに移動した可能性が示唆された.胃内容からは,クマネズミは季節毎に様々な動植物を食べることが示され,そのなかには,鳥類,両生類,爬虫類など希少生物が含まれていた.野外実験では,クマネズミを2地点から除去して餌生物の反応を調べたが,今年度はネズミ対照地も個体数が低いままであったため,差は見られなかった. 本研究は,クマネズミ個体数が増加した場合は,様々な生物にその影響が及ぶ可能性があることを示した.しかし,クマネズミの個体数の増減には,捕食者として強い影響を及ぼすと想定していたマングースだけでなく,シイの豊凶など他の要因も深く関与することが示唆された.今後は,これらの結果をふまえ,シイ類の豊作事のクマネズミの動態,そしてマングースとの関係について,より詳細なモニタリングを実施し,その上でマングースを除去した際の影響を予測する作業が必要になるであろう.
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