Research Abstract |
北海道北西部,羽幌地域に分布する蝦夷層群の上部チューロニアン階〜下部カンパニアン階より採取された泥岩サンプルから採取された浮遊性および底生有孔虫化石の酸素・炭素安定同位体比分析を行った。 まず,同位体比分析に用いる化石試料の保存度を確認するために,有孔虫化石の実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡観察を行った.その結果,上部チューロニアン階〜中部コニアシン階,サントニアン階下部および上部,カンパニアン階下部からは続成による二次的方解石の沈着や,殻体の溶解など認められない初生的な殻体を保持した有孔虫の産出が確認された.一方,コニアシアン階/サントニアン階境界,およびサントニアン階中部から産出する化石の保存状態は比較的悪く,同位体分析には適さないサンプルであることが明らかになった.そこで,上記により初生的な殻体を保持していると確認された化石試料の酸素・炭素同位体比分析を行った.分析には,それぞれ底生9属(Cibicites spp.,Gyroidinoides spp.,Hoeglundina spp.,Lenticulina spp.,Nodogenerin sp.,Nuttallinella sp.,Psilocitharella sp.,Ramulina sp.,およびand Saracenaria spp.),浮遊性5属(Archaeoglobigerina spp.,Dicarinella spp.,Globotuncana spp.,Marginotruncana spp.,およびWhiteinella spp.)の有孔虫化石を用いた.これらの試料の分析から得られた酸素同位体比から,約9千万年前〜8千万年前を通じた白亜紀後期の北海道周辺における海水の表層水温はおよそ26℃,水深300m地点における水温はおよそ17℃と算出された.これは現在の北西太平洋では北緯約25°の亜熱帯地域に相当する台湾沖での海水温度構造と比較され,白亜紀後期には北緯約40°程度であったと考えられる北海道周辺地域と比較して極めて温暖であったことが明らかになった.
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