2004 Fiscal Year Annual Research Report
自己および他者の情動理解に関する発達的変化とその障害について
Project/Area Number |
03J07642
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊池 哲平 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自閉症 / ダウン症乳幼児 / 自己 / 対人関係性 / 情動 / 発達的関連性 |
Research Abstract |
今年度は乳幼児期の自閉性障害及びダウン症児を対象として、そのコミュニケーション行動の発達プロセスを縦断的に調査した。その結果、自閉性障害児においては、他者との情動的共有性を持たずに指さし行動を行っていることが示され、こうした知見はUCLAグループのSigman et al.(2003)の指摘と一致するものであった。 さらにダウン症乳幼児においては、模倣行動が極めて早く獲得されるという結果が示された。これらからダウン症乳幼児は他者に対する社会的志向性(Social Orienting)が高く、そのことが初期発達における他者理解の基盤となっていることが示唆された。従って、こうした障害児の発達プロセスにおいては、各々の障害に固有の特徴が認められ、臨床的視点からもそれぞれの特徴を活かした早期スクリーニング法の開発へと結びつける必要性が指摘された。こうした知見は、今年度の日本発達心理学会で発表予定である。 加えて、上述した初期発達におけるコミュニケーション行動の発達の背景には、運動発達など他のコンピテンスと強い結びつきがあることが示唆された。ここから「発達的関連性(Developmental Linkage)」という人間の発達像を総合的に捉える視点からダウン症乳幼児の発達プロセスについて分析していった。この研究結果は「特殊教育学研究」誌に掲載予定である。 また実験的手法を用いた自己情動の理解に関する定型発達モデル構築に関して、自己表情の認知課題を行った知見が「発達心理学研究」誌に掲載され、さらに自閉症の特異性について発達心理学会(平成17年3月末開催)にて京都大学・遠藤利彦教授、兵庫教育大学・井上雅彦助教授、九州大学・神尾陽子助教授と共に自主シンポジウムを開催し、研究の概要及び今後の課題について検討する予定である。
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Research Products
(5 results)