2004 Fiscal Year Annual Research Report
リスク管理の理念と現実-特に化学物質管理に関する経済地理学的研究-
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03J07681
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡村 里恵 (野見山 里恵) 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レスポンシブル・ケア / リスク・コミュニケーション / 地域対話 / 自主的活動 |
Research Abstract |
本年は、化学産業の環境・安全に関する自主的活動であるレスポンシブル・ケア(RC)活動のなかで、特に工場周辺住民との「リスク・コミュニケーション」の一例でもある「地域対話」に焦点をあてて、その内容の特徴を過去の「地域対話」と比較しながら研究を行った。特に情報の送り手である企業は受け手である住民のニーズをどのように把握し、それに対応しようとしているのかに着目した。 具体的には、RC活動のみならず、企業の社会的責任に関する基礎的な文献を講読する一方、堺・泉北、水島、兵庫、大阪地区のRC活動の地域対話へ参加した。また、従来のRC活動よりも小さな規模で対話を行っている宇部・小野田地区や個別企業での対話活動が行われている山口東地区の企業に対するヒアリングを行った。 今年度、私が参加した全ての地区の地域対話では、前回(2年前)は情報の受け手として必ずしも想定されていなかった、工場地域周辺の住民が参加していた。また、事前に近隣自治会にアンケート調査を行うという手法で、住民のニーズを把握しようとしているケースもでてきた。一方、化学産業という枠にとらわれずにコンビナート地域として地域の環境・安全をどのように考えるかという側面から他産業も参加するという形で地域対話を行うケースも観察された。このように近年、地域ごとの特色が見られるようになってきている。しかし、現在の開催方法では、県内に事業所が点在しているために、情報の受け手を特定地域の住民に固定することが難しく、RC活動の理念である「住民の不安を探り出し取り組む」ことが十分にできないと思われる地域が多い。今後は、山口西・東地区のように小規模な対話活動へと発展していく可能性も考えられる。今後の研究では、地域ごとの特色をより厳密に類型化する作業を進めながら、「リスク・コミュニケーション」としての5地域対話」の特質と社会的な位置づけを明らかにしていきたい。
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