2003 Fiscal Year Annual Research Report
絡み目、3次元多様体の量子不変量が反映する幾何的性質
Project/Area Number |
03J07696
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長郷 文和 九州大学, 大学院・数理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | A-polynomial / A-ideal / colored Kauffman bracket / Kauffman bracket skein modele |
Research Abstract |
今年度は,A-イデアルの幾何学的性質に関する研究を行った.以下にその詳細を述べる. A-イデアルとは,結び目群のLie群SL(2,C)への表現の指標たちがなす代数的集合(以下指標空間)から定義されるA-多項式の"非可換化"により構成される3次元球面S^3内の結び目の不変量である.Frohman-Gelca-LoFaroによるA-多項式の非可換化(以下FGL理論)は,それまでA-多項式の"非可換版"を自然に誘導するとされていたが,私はその非可換化には飛躍があることを発見した. まず,FGL理論の可換な場合の一つの応用として,私は(2,2p+1)-トーラス結び目に対するA-多項式の公式を与えた. さて,Kauffman bracketスケイン加群はコンパクトで向け付け可能な3次元多様体Mに対して定義される.S^3内の結び目Kの開正則近傍N(K)をとするとき,3次元多様体T^2×[0,1],S^3-N(K)の境界に沿った"標準的"貼り合わせが誘導するKauffman bracketスケイン加群間の写像 π_t : Κ_t(T^2×[0,1])→Κ_t(S^3-N(K)) の核Ker(π_t)が非零部分加群ならば,その非零元を用いて,colored Kauffman bracketのLie環sl(2,C)表現次元に関する漸化式を導くことができる.R.Gelcaにより与えられたこの漸化式公式は,"可約"であることがわかった.これに対して,私はより"効果的"な,そしてsl(2,C)表現次元に関してより"対称性"の高い公式を導いた.この対称性の高い公式の構成を見ていくことにより,Ker(π_t)の非零元から誘導されるcolored Kauffman bracket(の漸化式)は『結び目の補空間の指標空間を非可換化したときの定義多項式(よってA-多項式の情報を含んでいる)』を意味していることがわかる. A-多項式の存在を考えると,Ker(π_t)は任意の結び目に対して非零であることが期待される.私とR.Gelcaはツイスト結び目に関して,その補空間(外部)のKauffman bracketスケイン加群の中の"最小関係式"というある特殊な関係式を定義し,その具体的表示を求めることにより,Ker(π_t)の非零元を求めるための一つの道具を構成した.更に,最小関係式の一つの応用として,最小関係式の非可換変数tを-1に退化させることにより,ツイスト結び目の指標空間の定義多項式を与えた.
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Research Products
(1 results)