2003 Fiscal Year Annual Research Report
リズム形成における振動子群の引き込みと確率同期現象
Project/Area Number |
03J07712
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 弘和 九州大学, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 確立同期現象 / 確立共鳴現象 / 引き込み現象 / 結合振動子系 / Belousov-Zhabotinsky反応 |
Research Abstract |
本研究は、非線形力学で近年注目されている確率同期現象と確率共鳴現象を、ペローゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応を用いた実験とそれを基にした数値シミュレーションから明らかにすることを目的に行った。本年度は以下の点を明らかにした。 1.化学反応系における実験 離散的な大自由度の化学振動子系における確率同期現象は、これまで全く報告されていない。そこで、新たに大自由度離散系を実現する方法として、ガラス基板上にマイクロブラスト工法によって微細加工された格子パターンを用いてイオン交換樹脂ビーズを正確に配置する方法を考案し、2次元格子振動子系(10×10格子系)を作製した。この実験系を用いて大自由度離散系の引き込み実験を行い、新たな同期オーダーパラメータを定義して引き込み状態を数値化し、引き込み状態の結合強度依存性を明らかにした。また光感受性のBZ反応を採用し光照射によって全振動子に均一に雑音を与えた結果、最適雑音強度で同期率か最大になることが明らかになった。 2.数値シミュレーション 光感受性BZ反応のモデル方程式を用いて、実験で得られた結果を基に数値シミュレーションを行った。その結果、(1)振動子同士が適切な結合係数を持ち、かつ、分岐点に近いほど確率同期現象が強く起こること、(2)雑音が振動子間の結合強度やその特性長を変化させていることが明らかになった。また、(3)興奮状態に移る分岐点近傍において最適雑音強度下でマクロなリズムが最も誘起され、一種の確率共鳴現象が生じることが明らかになった。 3.生物リズムへの応用 植物におけるサーカディアンリズムの詳細な位相ダイナミクスと外部摂動に対する応答を調べた結果、(1)定常環境下において植物細胞群が脱同期と再同期を繰り返していることが示唆され、(2)パルス摂動による細胞群の強制同期に伴ってリズムの位相シフトが生じることが明らかになった。
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