2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J07769
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
志賀 拓也 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子磁性体 / 三元金属集積体 / 3d金属イオン / 4f金属イオン / シアノ架橋 / 三次元ネットワーク / 二次元ネットワーク / 磁気構造制御 |
Research Abstract |
本研究は研究計画に記載していた以下の2つの内容に沿って行った。 1.有効イオン半径認識能を利用した3d-4f混合金属錯体の合理的合成法の確立 2.ランタノイドイオンを含む分子磁性体の磁気光学効果の研究 1については当初予定していた二種類の新規二核化配位子の合成に成功し、戦略通り一段階反応で3d-4f異種金属錯体を得ることができた。この結果からβ-ジケトンおよび2,6-ジアシルピリジンサイトはそれぞれ3d金属イオンと4fイオンの有効イオン半径を認識することができる配位サイトとして有用であることが分かった。また、これらの錯体の磁気測定から3d-4fイオン間の磁気的相互作用についての知見を得ることができた。2についてはf-f遷移を持たない[Ni_2La(L)_2][Fe(CN)_6]二次元磁性体と鋭いf-f遷移を持つ[Ni_2La(L)_2][Fe(CN)_6]二次元磁性体について極低温域でのMCDの測定を行ったところCN基からFeへのLMCTに起因する吸収帯が観測されたが、f-f遷移由来の吸収帯はほとんど見られないことが分かった。これはf-f遷移の振動子強度が非常に小さいためだと考えられる。f-f遷移由来の磁気光学効果を観測するにはLMCTのない磁性系で観測することが必要であると予想された。現在、LMCTが比較的弱いと予想される[Co_2Ln(L)_2][Cr(CN)_6]三次元磁性体が得られ、系統的に磁気特性評価を行った。今後、この系において磁気光学効果の測定を行う予定である。また、研究課題である分子磁性体への展開という点においては、様々な化合物の合成に成功した。特に[Ni_2Ln(L)_2][Fe(CN)_6]二次元磁性体および[Co_2Ln(L)_2][Cr(CN)_6]三次元磁性体の系においては、Lnイオンの系統的変換を行うことができ、Lnイオンの種類によって磁気構造が変化することが明らかとなった。また、Lnイオンの種類に応じて磁気相転移温度や保磁力を制御することができた。[Co_2Ln(L)_2][Cr(CN)_6]三次元磁性体においては15.4Kの磁気相転移温度を持っており、PrussianBlue類縁体の値を上回っており、3d-4f系の分子磁性体としては世界最高の値を持っていた。これらの研究結果は、6月10日〜6月13日にストラスブール(フランス)で開催されたE-MRS2003、7月27日〜8月1日にローマ(イタリア)で開催されたICM、9月24日〜26日に山形大学(山形市)で開催された錯体化学討論会において成果報告し、海外でも高い評価を得た。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 志賀拓也: "Structure and magnetism of a trinuclear Cu^<II>-Gd^<III>-Cu^<II> complex derived from one-pot reaction with 2,6-di(acetoacetyl)pyridine"Inorganic Chemistry Communication. 6. 15-18 (2003)
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[Publications] 大場正昭: "Synthesis, structure and magnetic properties of a linear Cu(II)Cu(II)Gd(III) complex"Polyhedron. 1905-1910 (2003)