2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J07803
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 洋耕 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 造礁サンゴ群集 / 高緯度城 / 空間競争 / 放卵放精 / 幼生 |
Research Abstract |
1.高緯度造礁サンゴ群集の構造と動態:2001-2003年にかけて、熊本県天草に群生する造礁サンゴ群集約100m^2がデジタルカメラによりモニタリングされた。対象域からは約3,000個体、12科30属54種が観察され、被度は約28%であった。個体数では半数以上がFaviidae(57%)であり、続いてAcroporidae(17%)、Poritidae(15%)であった。生殖様式別にみると、放卵放精種に於いては小型個体の割合が少ないのに対し、幼生放出種ではその逆であった。2002、2003年には2-4の台風が直撃し、多くの大型個体が基板から剥がされ消失した。その結果、3年間という短期間に、約10%サンゴ個体数が減少し、特にAcroporidae(-24%)で被害が大きかった。逆に幼生放出種であるPocilloporidaeでは240%もの増加が見られ、この傾向が継続すれば、近い将来対象群集の構造が大きく変化することが示唆された。 2.造礁サンゴの空間競争:天草の造礁サンゴ7種(Acropora cf.hyacinthus, Cyphastrea serailia, Echinophyllia aspera, Favia favus, Hydnophora exesa, Montastrea valenciennesi, Platygyra contorta)の胃腔・スイーパー触手を用いた空間競争のメカニズムについて、次の3項目を調査した:(1)競争の頻度、(2)競争結果における個体サイズの影響(3)7種間に見られる競争関係の構造。結果より、使用された7種の造礁サンゴに於いて(1)種間競争の頻度は極めて高い、(2)個体サイズは競争結果に影響を与えない、(3)競争関係の構造はほぼ直線状であるが、6番目に強いE.asperaが一番強いH.exesaに勝つ逆転構造が見られることが分かった。 3.高緯度域造礁サンゴの放卵放精及び幼生の定着:天草の造礁サンゴ6種(A.cf.hyacinthus, C.serailia, E.aspera, F.favus, M.valenciennesi, P.contorta)の放卵放精は2001-2003年にかけて毎年7-8月のほぼ同時期に観察され、各種サンゴ個体間で同調していた。また、定着板(10×10cm)を用いた野外実験では、2001-2003年にかけてほとんどサンゴ幼生の定着は見られなかった(約1固体/50定着板/年)。この結果より、天草の造礁サンゴ群集はサンゴ幼生の供給源として機能しているが、生産された幼生の親群集への寄与率は大変低いことが示唆された。
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