2004 Fiscal Year Annual Research Report
サーカディアンリズムの温度補償性を導く分子反応ダイナミクスの数理的研究
Project/Area Number |
03J07807
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒澤 元 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サーカディアンリズム / 温度補償性 / ロバストネス / 非線形モデル / Enzyme Kinetics / フィードバック制御 / 最適化 / 飽和度 |
Research Abstract |
サーカディアンリズムの基本はフィードバック制御がもたらす不安定性にある.時計遺伝子が転写されてmRNAを作り,これは細胞質においてタンパク質に翻訳される.タンパク質が核に入り自らの遺伝子転写を抑制する.このネガティブフィードバックにより自律的なリズムが作られている.化学反応は温度によって速度が大きく変化する.ところが化学反応系がつくり出したサーカディアンリズムは,幅広い温度領域において周期がほとんど変化しないという「周期の温度補償性」を示す.これは細胞周期系などでは見られない性質である. 本研究は、遺伝子タンパク質ネットワークが温度に対する周期のロバストネスを創発する条件を明らかにすることを目指し数理的研究を行った.フィードバックループの各反応ステップが全体の周期に及ぼす影響を,固有値の感度解析により調べた.そして速度上昇の及ぼす全体の周期に対する影響が,1.飽和度によって,2.さらに分子反応ネットワーク上の場所によって,正反対になることを発見した.mRNA分解を含め,多くの反応の速度上昇は,周期を短くする一方,転写やタンパク質分解反応が速くなるとき,逆に全体の周期は長くなる.このときインループ反応が未飽和であるほど,転写の周期に及ぼす影響は大きくなることがわかった.この結論は異なる仮定に基づく数理モデルにおいても,一般的に成り立つことを大規模数値シミュレーションにより確かめた.さらに反応の温度依存性を取り込んだモデルを構築し,全体の周期の温度依存性を解析することによって,mRNA分解の温度依存性を小さくし,逆にタンパク分解・あるいは転写いずれかの反応の温度依存性を大きくすることにより,周期の温度補償性を創り出せることを明らかにした.
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Research Products
(1 results)