2003 Fiscal Year Annual Research Report
サーカディアンリズムの温度補償性を導く分子反応ダイナミクスの数理的研究
Project/Area Number |
03J07807
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒澤 元 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サーカディアンリズム / 非線形力学系モデル / 温度補償性 / ロバストネス / 遺伝子タンパク質ネットワーク / グラフ理論 |
Research Abstract |
行動の1日のリズムを遺伝子タンパク質ネットワークのダイナミクスにもとづいてつくり出す概日時計が,生体内外の激変する環境にたいしてロバストネスを創発するためのメカニズムについて研究した. 1.安定にリズムを作るための分子反応ダイナミックスの機構。 概日時計の遺伝子タンパク質ネットワークのモデルとして,時計遺伝子の発現,タンパク質のリン酸化,2量体形成によるカップリング,自己転写抑制などを取り込んだ非線形力学系モデルを用いた.反応ステップの飽和度のリズム形成条件に及ぼす影響を、線形安定性、大域安定性解析の手法を駆使して解析することにより,フィードバックループを順方向にたどる反応ステップ(インループ反応)については,未飽和であるほどリズムを形成しやすいことがわかった.ループの枝にある反応ステップ(ブランチ反応)については逆に飽和状態に近いほどリズムを作りやすい. 年度の後期にブリュッセル自由大学Goldbeter教授の研究室を訪問した.教授の研究室で収集した資料をもとにシミュレーターモデルを作成し,数理的研究から得られた結論が一般的に成り立つことを確かめた. 2.温度が変化し化学反応が速くなっても全体の周期が一定に保たれる「周期の温度補償性」をつくり出す機構 反応速度上昇の周期に及ぼす影響を,グラフ理論的解析によって,ネットワークの場所ごとに徹底的に調べあげ,反応の周期に及ぼす影響は(1)飽和度によって,(2)さらにネットワークの場所によって,正反対になることを発見した.とくにタンパク分解,転写の速度上昇が周期を大きく変化させる.この結果は周期の温度補償性を実現するためには,タンパク分解,転写の温度依存性を制御することがきわめて有効であることを示す.
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