2003 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジー的本性を鍵とした高分子の核生成メカニズムの実体解明
Project/Area Number |
03J08115
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 慎一 広島大学, 総合科学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 核生成 / 絡み合い / 高分子 / トポロジー / 流動場 / 結晶化 / 配向融液 / 結晶成長 |
Research Abstract |
高分子結晶化のメカニズムの最も重要な未解決問題は、結晶化初期過程である核生成における高分子鎖の絡み合いや滑り拡散などのトポロジー的本性の役割の実体解明である。本研究では、流動場における核生成・成長メカニズムの解明とX線小角散乱による核生成の直接的証明に成功した。 1.流動場における核生成・成長メカニズム 高分子の成型加工において流動場は広く用いられ、流動場で融液中の高分子鎖は変形し、結晶化が加速されることはよく知られているが、流動場における核生成・成長メカニズムはこれまで全く明らかにされていない。本研究では、流動場における核生成速度の過冷却度依存性から、「流動場の高分子鎖は融液中の異物(ゴミやピンなど)によって伸長されることによって配向融液となり、その配向融液から分子鎖が束状になったbundle核が生成する」ことを明らかにした。また、結晶成長速度の過冷却度依存性から、流動に沿った方向の成長は「分子鎖の再配列」による拡散律速過程、流動に垂直な方向の成長は「表面2次核生成」による核生成律速過程であることを明らかにした。同時に、流動場における核生成・成長の臨界ずり速度の発見から、結晶と融液界面における分子鎖形態を明らかにした。 2.誘導期における核生成の直接的証明 古典的核生成理論では、核生成の初期過程である「誘導期」において微小核が生成し、それが時間とともに成長していくことを予言するが、これまでにこの予言を実験的に証明した例はない。これは核生成初期過程では融液から生成する核の数密度が非常に希薄なため適当な観察手段が存在しないためである。そこで、試料に核剤を添加することによって発生する核の数を10^4倍程度に増大させて、X線小角散乱法によって核生成観察した結果、誘導期において数十nmスケールの核が発生し、そのサイズ分布が時間発展していく様子を初めて明らかにした。
|
-
[Publications] Shinichi Yamazaki, Masamichi Hikosaka, Akihiko Toda et al.: "Nucleation and Morphology of Polyethylene Under Shear Flow"Journal of Macromolecular Science Part B - Physics. B42,3&4. 499-514 (2003)
-
[Publications] Masamichi Hikosaka, Shinichi Yamazaki, Isao Wataoka et al.: "Direct Evidence of Nucleation During the Induction Period of Polyethylene by SAXS"Journal of Macromolecular Science Part B - Physics. B42,3&4. 847-865 (2003)