2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08179
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相馬 敏彦 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 排他性 / 恋愛・結婚関係 / 進化心理学 / 心理的暴力 / 精神的適応 / ソーシャル・サポート / 配偶者防衛 |
Research Abstract |
本研究は、対人関係における排他性の特徴とそれが個人の精神的適応に及ぼす影響とを検討するものである。本年度は、主に恋人・配偶者関係に焦点を当て、2つの調査研究を行った。 一つ目の調査研究は、社会人300名以上を対象とし、4〜5ヶ月の間隔を開けた縦断的調査であった。パーソナル・コンピュータを用いた解析の結果、以下の4つのことが明らかとなった。一つは、恋人・配偶者関係の当事者たちが自身の関係を他の関係と区別し特別視する傾向をもつこと、二つ目はその特別視が関係の外部にあるサポート利用可能性を低く見積もらせる場合のあること、三つ目は、以上の二つの現象によって、恋人・配偶者関係ではパートナーからの否定的な働きかけに対する反撃的行動が抑制されやすく、その結果、パートナーからの心理的暴力の被害が増すこと、四つ目は、心理的暴力被害が増すことで個人の抑うつ傾向が高まることである。 もう一つの調査研究は、世界50カ国以上で行われている国際調査の日本での調査であった。この調査は、進化心理学的な観点から人間の性行動を検討するものであり、検討対象となる行動には、恋愛関係における排他性に関連する行動も含まれた。そして、日本においても恋愛関係においては排他的な行動が求められ、それには性別などの要因が影響するかが検討された。 以上の結果より、進化心理学の知見から予測されるように、恋人・配偶者関係においては排他的になりやすいことが示された。さらに、本研究の結果より、そのような排他性が、心理的な暴力被害を仲介して、当事者たちの精神的健康に不適応をもたらすことが実証的に示された。
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