Research Abstract |
手術室や救急医療現場において,医師は患者の状態を的確に把握し,常に適切な処置を施さなければならない.一般に,医師が患者の状態を判断する情報源の一つとして,心電図,動脈血圧などの生体信号がある.しかしながら,波形の微妙な変化を捉えその要因を推論するには,高度な専門知識と豊富な経験が必要であり,熟練した医師でない限り適切な判断は困難である.そこで,患者の血管状態を自動的に認識し,その情報を的確に医師に伝達するといった医師の診断を支援するアプリケーションの開発を試みる. 現在開発環境としてLabVIEW(LabVIEW7.0,ナショナルインスツルメンツ)を利用しており,信号計測装置であるベッドサイドモニタ(BSS-9800,日本光電)からの信号をTCP経由でパソコンに転送し,計測データに対して(1)前処理(フィルタによるノイズの除去,R波の検出),(2)インピーダンス推定,(3)血液循環状態識別,(4)結果の表示をリアルタイムに行うシステムのプロトタイプを構築した.また,実際の手術現場で動作可能であることを確認した. 一方,提案手法を手術現場など限られた環境のみでなく,一般環境で利用するために血管の力学特性を非観血に捉える手法を構築する必要がある.そこで,従来動脈血圧の計測に利用していたカテーテルの代わりにフィナプレス(Finapres2300,オメダ)を利用し,非観血に動脈血圧をbeat-to-beatで計測し,血管の力学特性を捉えることを試みた.また,提案手法を下肢へと応用し,下肢の血管力学特性を推定することを試みた結果,下肢の末梢部位における血管の力学特性を推定可能であることを確認した.下肢末梢部位の血管力学特性を推定した研究は現在報告されておらず,今後様々な解析を行うことで,動脈硬化などを判明する新しい手法となる可能性があると考えられる.
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