2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08383
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Research Institution | Hosei University |
Research Fellow |
郡司 大志 法政大学, 比較経済研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 金融危機 / 通貨危機 / 単位根検定 |
Research Abstract |
本年度は、金融危機後の経済改革が経済成長に及ぼす影響について実証分析した論文を国際的な学術雑誌へ投稿した。再度査読のため、改訂を続けている。論文の内容は以下の通りである。1991年に金融危機に見舞われ、大規模な経済改革を行ったインドを扱い、国内の経済成長が発散していることを実証分析によって明らかにした。インドは州ごとのデータが豊富であるため、経済成長の実証分析はこれまでも盛んに行われてきたが、これまでの手法には問題点が指摘されている。先行研究では、一人当たり所得成長率を初期の一人当たり所得で回帰する方法が用いられてきた(コントロール変数には様々なものがある)。しかしながら、この手法では初期以降の所得の推移を考慮することはできないという欠点があった。また、さらに重要な問題点として、この手法は統計学で有名な「ガルトンの誤謬」と全く同じ誤りを犯す可能性がある。そこで本稿では、近年研究が進んでいる時系列的手法を用いることで低成長の地域ほど高い成長率を示すかどうかを検証した。例えば、マルコフ遷移行列の推定や、単位根・共和分検定を用いた手法である。これらの手法を用いれば、所得の分布がどのように変化したのかを明確に把握することができる。その結果、明らかに金融危機後に所得の格差は広がり、新古典派経済成長理論で予測されるような収束は見られない(むしろ発散している)ことが分かった。このような現象は先進国の国内の収束に関する実証分析とも大きく異なる結果である。
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