2005 Fiscal Year Annual Research Report
摺動面被覆率による人工関節摺動面の機械的物性変化の解明と最適設計への適用
Project/Area Number |
03J08395
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
益田 泰輔 大分大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 関節潤滑 / トライボロジー / 生体適合材料 / インテリジェント材料 / 蛋白吸着 |
Research Abstract |
これまでに,Metal-on-Metal人工関節摺動面に対して摺動面被覆率というパラメータを提案し,被覆率による人工関節摺動面の耐摩耗性を求めてきた.そこで昨年度までに,被覆率がMetal-on-Metal人工関節摺動面に形成された酸化膜や吸着分子膜の再形成に大きく影響を及ぼすパラメータであり,人工関節摺動材が潜在的に保有する耐摩耗性を最大限に活用する可能性を示唆することができた.その原因として,(1)被覆率が酸化膜層の硬化や加工変質層の塑性変形を左右すること,あるいは(2)摺動面被覆部において関節液成分(主に蛋白成分)による境界潤滑性の向上し,耐摩耗に寄与することを示唆した. そこで本年度は,蛋白成分が摺動面に吸着し耐摩耗に寄与することを明らかにするために,潤滑液中の蛋白質をリアルタイムで定量し摺動面への吸着量を見積もる方法の構築を目指した.その結果以下のことを明らかにした. 1)臨床用屈折計を用いることにより,簡便に関節液中の蛋白濃度を定量でき,リアルタイムに吸着量を見積もることが可能となった. 2)関節液中の蛋白濃度は,経時的に低下することを示し,高被覆率においては蛋白濃度低下への遷移期の促進されることが明らかになった. 総括として,昨今の組織工学・再生医工学の発達により,将来的に関節疾患は根治することが考えられる.人工関節は根治療法が確立されるまでのBridge-Use(橋渡し的対処療法)と捉えることができる以上,その開発は,最小の時間的・費用的投資とするべきである.摺動面被覆率は,新素材の開発ではなく,臨床使用されている人工関節摺動材料が潜在的に保有している耐摩耗性を新たな知見から最大限に活用するものであり,必要不可欠な技術となりうる,また,被覆率を人工関節へ適用するに当たって,最適な数値を示すには至らなかったが,人工股関節設計における被覆率の導入は,人工股関節の潤滑のみならずトライボロジーの分野に一石を投じるものとなった.
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