2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08454
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡本 裕樹 名古屋大学, 法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 契約 / 第三者 / 相対性原則 / 拘束力 / フランス |
Research Abstract |
本研究は、契約の相対的効力の原則が持つ二つの側面、契約は他人を利さない、契約は他人を害さない、のうち、日本法における後者の意義の明確化を目的としたものである。本年度は法における契約の相対性原則に関する比較法研究を、直接の研究対象とした。ローマ法を継受し、かつ、相対性原則に関してローマ法諺に倣った明文規定(仏民法典1165条)を持つ仏法ではあるが、契約締結に関する厳格な形式主義や債務の人格性を採用せず、相対性原則の根拠を意思自治の原則に求めている点において、ローマ法との隔絶が見られる。そのような仏法における相対性原則の特色は、契約の効力を拘束力と対抗力に区別し、拘束力のみが相対的であると理解している点にある。このうち、本研究の目的からは、これまであまり検討されてこなかった拘束力の意義を探ることが必要であった。そこで、今年度は契約の拘束力に関する仏語文献を読み進め、仏法の現状を確認することを試みた。その中で明らかとなりたのは、拘束力の範囲と意義の不明確性であった。まず、拘束力の人的範囲を画する伝統的な分類・当事者概念が、J.Ghestinの有力な批判にさらされている。両見解の違いは、当事者概念の基準について、伝統的な見解が契約を締結しようとする意思に、Ghestinは契約の効力によって拘束されようとする意思に、その基礎を置いている点にある。また、従来は、契約の拘束力は、契約に基づく債権債務関係を履行する義務の負担、と解されていた。これに対してP.Ancelが契約の効力が債務の負担に留まらないことに着目して、その他の契約の効力と拘束力との関係について論じている。これまでのところ、仏法でも契約の拘束力の理解は未だ漠然としており、拘束力自体に関する研究もあまり見られない。今後も、仏法における契約の拘束力について研究を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)