2003 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀前半のロシア統治構造の研究-貴族エリート層の社会・文化的分析を中心に-
Project/Area Number |
03J08467
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
田中 良英 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近世史 / ロシア / 国制史 / 政治史 / 貴族 |
Research Abstract |
本年度は、18世紀ロシア帝国の統治構造について、エカチェリーナ1世時代(1725-1727年)の実態解明を中心に研究活動を進めた。第一に刊行史料の『ロシア帝国法令全書』と『ロシア帝国歴史学協会集成』、さらに以前に現地文書館で収集した法資料を接合して数量的に整理することにより、18世紀初頭のピョートル1世による改革とエカチェリーナ政府による諸政策との間の連続性と相違点の双方を明らかにすることを試みた。従来の研究史においては両時代について断絶が強調されるきらいがあったが、今回の整理によりエカチェリーナ政府によるピョートル改革の基本的な方向性の継承、諸問題点の修正、さらに同政府がロシア帝国の統治システムの整備に果たした意義などの特徴を示せたように思う。この成果については、平成15年7月に東京大学で行われた日本18世紀ロシア研究会第1回研究発表会で口頭報告を行った。第二に当時の勤務層が皇帝政府に寄せた嘆願書を数量的に整理し、政府に対する彼らの要望の内容と用いた論拠を分析することで、彼らの勤務の実態と意識の双方を解明することを試みた。この成果については、同年10月に東京大学で行われたロシア史研究会大会において自由論題報告として発表した。またその後2ヶ月間ロシアに滞在し、不備であった史料の補完や最新の研究動向の把握に努めた。この結果、上記の報告内容に若干の修正を施した後、雑誌論文として投稿し掲載が決まっている。第三に夏期に約3週間、北海道大学に滞在し書庫内で集中的に作業することにより、ロシア革命前に刊行された雑誌等を中心に刊行文献の内容調査に努めた。第四に18世紀ロシア史研究を代表する研究者カメーンスキーの近著を手がかりに、他研究者による成果と比較検討することで、18世紀ロシア帝国を長いタイムスパンで包括的に捉える彼の視点に基本的に賛同しつつ、個々の問題点も指摘する形で書評論文を発表した。
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Research Products
(2 results)