2004 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀前半のロシア統治構造の研究-貴族エリート層の社会・文化的分析を中心に-
Project/Area Number |
03J08467
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
田中 良英 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近世史 / ロシア / 国制史 / 政治史 / 貴族 |
Research Abstract |
本年度は、エカチェリーナ1世時代(1725-27年)におけるロシア統治構造の諸相の解明を目的とした研究論文執筆の準備を中心に、研究活動を進めた。このような本年度における具体的な作業の中では、当時の官界・軍の中で最高権力を保持し実質的な統治機能を担っていたとされる、最高公爵メーンシコフの行動記録の分析が大きな位置を占めている。同記録の内で現存する1726-27年の記事を通じて、国家中枢における人的結合関係、高官の日常的な行動様式、実際的な事務処理へのメーンシコフの関与のありよう、などについて情報の整理に努めた。また上記の行動記録が欠落する1725年の情勢については、当時のロシアに駐在していた各国外交官による記録を渉猟し、ロシア宮廷内の権力構造の解明を進めた。さらに以前よりモスクワのロシア古文書館で収集してきた、メーンシコフ関連の諸史料の読解・整理を通じて、人事や褒賞などの場面を中心に、皇帝政府の法令が実地に適用される過程にも注目した。なお年度内の約3週間のモスクワ滞在により、文書館史料の補充に努めている。 その他、早稲田大学西洋史研究会からの依頼に応じ、「ヨーロッパの『王権』」の論題による第45回大会(2004年12月4日)において口頭報告を担当した。そこでは、ピョートル1世時代(1682-1725年)のロシアにおける入市式や婚礼、戴冠式といった国家儀礼の性格について、欧米史学の最新の研究動向を紹介すると共に、改めて原史料にあたって具体的な式次第の内容や特徴の提示も試みている。同シンポジウムは全世界的な傾向に沿い、「権威」の側面から君主権力の機能を捉え直そうとする企画であり、他報告者や参加者との間の比較史的な観点による議論を通じ、儀礼・表象研究の重要性を再確認することとなった。
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Research Products
(1 results)