2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒロシマの記憶が生成される場における国民国家イデオロギーの作用
Project/Area Number |
03J08471
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
直野 章子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化社会学 / 記憶 / 国民国家 / ヒロシマ |
Research Abstract |
「ヒロシマの記憶」が生成される場において、国民国家イデオロギーがどのように作用しているかを明らかにし、そのイデオロギーを揺るがすために行っている本研究の初年度における成果は次の通りである。 1、原爆のマスクーナラティヴが、戦後50年間に作られていった歴史的過程を考察するために、敗戦直後から敗戦50周年までの原爆記念日前後に読売・毎日両新聞に掲載されたヒロシマ関連の記事と社説を収集、分析した。研究論文で論じたように、占領政策・原水禁運動・冷戦下の日米同盟・アジア太平洋戦争に関する言説の変遷などとかかわりながら、「ヒロシマの語り」は「国民国家の語り」として生成されてきた。 2、1974・75年にNHK広島放送局が募集した「市民が描いた原爆の絵」の作者のうち、約200人に対して広島平和記念資料館が行った追跡調査の結果を分析し、返答した作者のうち、30人に対して一人あたり2時間から3時間の聞き取りを行った。被爆体験とは既存の言語の枠を越えており、文章や絵などの表現方法では描ききることが出来ない。特に聞き取り調査からは、60年近い時間をへた今でも目撃した光景が脳裏に焼きついていること、"人"としての死を許されなかった者たちに対する弔いの営みには終わりがないことが明らかになった。 3、ヒロシマの記憶を国民国家イデオロギーから引き離し、日本植民地支配下に置かれていた人たちの記憶を取り戻すことを目指すにあたり、在韓被爆者の聞き取りを進めた。在韓被爆者とのネットワーク作りをし、10人に対してインフォーマルな聞き取りを行った。日帝支配の歴史がもたらし暴力、特に戦後60年近く放置され続けてきたことにたいする怒り、朝鮮半島に帰還してからの苦難に満ちた生活、被爆者として韓国社会で生きていくことの困難について証言してくれた。
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Research Products
(1 results)