2003 Fiscal Year Annual Research Report
超国境的社会移動にみる「移住労働者の女性化」の帰結〜フィリピン女性を中心に
Project/Area Number |
03J08476
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小ヶ谷 千穂 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 移住労働者の女性化 / フィリピン女性 / ジェンダー規範 / 世帯内関係 / 移住女性の組織活動 / 移住家事労働者 / エンターティナー / ライフ・コース |
Research Abstract |
研究初年度にあたる本年度は、「移住労働者の女性化」が女性の社会的地位達成にもたらす帰結を明らかにするという課題のもと、送り出し側・受け入れ側双方での聞き取り調査の実施を中心的に行い、それぞれ以下のような予備的知見を得た。 (1)フィリピン農村部調査地での女性の海外出稼ぎについての現状追跡調査:ライフ・コース・アプローチの重要性 98年より実施している継続調査を通して、未婚時に海外出稼ぎを経験したのちフィリピンで結婚・出産し、その後再び海外出稼ぎに参入する、という継続的な海外出稼ぎのプロセスが観察されている。 こうした女性たちの場合、「海外出稼ぎ」そのものがキャリア化することで、既存のジェンダー規範が乗り越えられているような状況が見られる。 こうした点から、移住労働者女性の社会的地位達成を検討する際のライフ・コース・アプローチの重要性が確認される。 (2)元エンターティナーと再統合訓練プログラム 家事労働者とは異なる職種の帰国移住女性への聞き取り(全員が出稼ぎ時には未婚。日本で子どもを持ち、その後フィリピンへ帰国)からは、(1)世帯内での彼女たちの海外出稼ぎに対する評価が、出稼ぎの意思決定時と就労時、そして帰国後においては一貫しておらず、(2)同時に、子どもを持ったことが彼女たちの就労戦略や人生設計において、きわめて重要なモメントとなったことが確認された。 (3)シンガポールにおける移住家事労働者の社会活動と支援活動の広がり 継続調査を行っているシンガポールにおいては最近、移住家事労働者の支援活動が、シンガポール社会の市民社会運動の展開のひとつの牽引力となっており、滞在の長期化した移住家事労働者女性自身も、こうした運動において重要な役割を担っている。このことから、移住家事労働者の地位上昇のための取り組みが、受け入れ社会の社会運動全体の促進につながる力を持ちうることが確認された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] OGAYA Chiho: "Social Activities of Filipino Domestic Workers in Hong Kong and Singapore : An Emergence of New Subjectivities"Asia and Pacific Migration Journal. Vol.13 No.2(近刊). (2004)
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[Publications] OGAYA Chiho: "Social discourse towards Filipina women migrants"Feminist Review. Issue 77(近刊). (2004)
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[Publications] サスキア・サッセン(小ヶ谷千穂 訳): "「移民とローカル労働市場」(原著Saskia Sassen 1995, "Immigration and Local Labor Market" in Portes ed., The Economic Sociology of Immigration : essays on networks, ethnicity and entrepreneurship, Rusell Sage Foundation.)"現代思想. 第31巻6号. 104-128 (2003)
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[Publications] Mamoru Tsuda: "Filipino Diaspora : Demography, Social Networks, Empowerment and Culture"Philippine Social Science Council and UNESCO. 212 (2003)
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[Publications] 小井土彰宏: "移民政策の国際比較"明石書店. 450 (2003)