2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲル論理学における「本質論」の生成と弁証法的形而上学批判についての研究
Project/Area Number |
03J08477
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘーゲル / 歴史哲学 / カント / 関心 / ハーバーマス |
Research Abstract |
1.ヘーゲルの体系において、歴史は「精神哲学」の第二部「客観的精神」において扱われている。しかし、「精神哲学」の第三部であり、ヘーゲル体系の最終部門である、「絶対的精神」においても、「芸術」「宗教」「哲学」という三つの形態でそれぞれ「歴史」が問題となっている。 2.ヘーゲルの歴史哲学は、歴史を単なる経験の記述(Historie)として扱うのではなく、概念の展開として理解するもの(Geschichte)である。従ってその「歴史性」は、叙述の視点と史的事実とが反省関係におかれることによって成立している。「反省」は「論理学」「本質論」における概念構造を示す用語であるが、ヘーゲルの歴史観とこの「反省」との関連が明らかになった。 3.他方で、従来の哲学説を体系のうちに発生論的に位置付けることによって、特に『精神現象学』と『論理学』は「歴史性」を含んでおり、これはまさに、カントが「関心」概念を導入することによって取り組んだ問題のヘーゲル的な解決をなしている。 4.そこで、日本哲学会での口頭発表と論文Autonomy of Practical Reason and its Limit : Kant's Theory of Practical Interestにおいて、カントの関心概念の中心をなす「実践的関心」を取り上げ、ドイツ観念論が「自己意識の歴史」によって発生論的解決を試み、ヘーゲルの『精神現象学』に結晶することになる問題意識の端緒を明らかにした。 5.さらに日本ヘーゲル学会主催の「日独シンポジウム」において、「世界の客観性と了解の相互主観性」と題する発表を行い、『精神現象学』における人類の歴史の過程としての「精神」概念をハーバーマスのヘーゲル論を援用しながら検討した。
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