2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08500
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
増原 宏明 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 医療需要 / ミクロデータ / count dataモデル / 制度改定 / 老人保健制度 / 消費者主権的需要 / Principal Agent仮説 / 混合分布モデル |
Research Abstract |
平成15年度は、研究初年度にあたり、わが国における医療制度の改定が患者の受診をどのように変化させたのかを探るべく、医療機関が保険者に対して医療費の請求をする際に発生するレセプトデータと被保険者の台帳であるマスターデータを用いて、厳密に制度の効果を分析した。 第1の研究として、70歳になり老人保健制度に適用される個人が制度適用後に受診行動を変化させるのかを、70歳の誕生日を間近に控える個人を直接抽出し分析した。この研究の特徴は、近年医療経済分析において活発に利用されているcount dataモデルをわが国のデータを用いて検証したことと、この手法を用いると未受診者の行動も明示的に分析でき、さらに患者が自らの受診を医師に委託するのか、それとも自ら全て決定しているのかを統計的見地から明らかにした上で、制度適用の政策的効果を検証した点にある。その結果、老人保健に適用されることは健康な人も含めて全ての個人の受診を促すことはないが、特定の個人の受診を増加させることが明らかとなり、老人保健制度という一般的に自己負担率の引き下げに対して、確かに受診の増加は存在しえることがわかった。 続いて1997年9月に実施された医療保険制度の改定を、上で述べたcount dataモデルを用いて分析した。この研究では、自己負担率の据え置かれた家族よりも、引き上げられた本人の方が受診抑制効果は大きく、先行研究で指摘された家族の受診抑制効果が大きいという制度改定とは一致しない結果を覆すことができた。 今あげた2つの研究はすでに日本経済学会春季大会(大分大学)応用計量分析セッション、同学会秋季大会(明治大学)医療経済学セッションで発表を行い、討論者からの高い評価を得た。コメントを論文に生かした上で、雑誌への投稿を行い、現在審査中である。
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