2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08508
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小林 麻衣子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 思想史 / スコットランド史 / ジェイムズ6世 / 政治思想 / ルネサンス |
Research Abstract |
本年度は、16世紀後半のスコットランドの思想家等の一次史料、そして同時代のヨーロッパの著名な思想家たちの一次史料の収集を国内で行い、その読解・分析を試みた。これらの史料を読み進めていくと同時に、本研究の主要な対象であるスコットランド国王ジェイムズ6世の思想を再考察した。最初に、ジェイムズの政治的作品である『自由なる君主政の真の法』と『バシリコン・ドロン』を再読し、次に彼の他の作品、即ち、聖書の解釈について提示した『ヨハネの黙示録に関する瞑想』と『列王記に関する瞑想』、魔女の特徴について記した『悪魔学』、さらに彼の詩作品を読み進めた。その上で、ジェイムズの思想と、当時のイングランド及びフランスのロイヤル・イデオロギーとの類似点や相違点に着目した。ジェイムズは、ヨーロッパの他国のロイヤル・イデオロギーと同様、王権論の基盤を聖書(神)、自然法、そして自国の歴史観に求めた。他方で、ジェイムズは王権の神授的起源を熱心に説くものの、彼がその理論を正当化し、補強することを可能とする中世以来の伝統である触手儀礼という国家儀礼を拒んだ点は非常に独特であった。ジェイムズがなぜ触手儀礼に対して否定的であったかについては幾つかの原因が考えられるが、第一に、ジェイムズはスコットランドで偶像崇拝を拒否するカルヴァン主義者として育ち、そうした状況では触手儀礼の伝統は維持されなかったといえよう。第二に、イングランドとは異なり、スコットランドにおける国王と貴族との関係は比較的形式ばらずに親交を深めることが可能であったため、触手儀礼によって国王の差別化をはかる必要がなかったと考えられる。以上のように、本年度は、とりわけ王権の基盤である聖書と自然法についての分析に焦点を当てたため、今後は歴史観についてさらなる研究を進めていく必要がある。
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Research Products
(2 results)