2003 Fiscal Year Annual Research Report
瞬目反射条件付けを行動指標とした脳高次機能のシナプス・分子基盤解明へのアプローチ
Project/Area Number |
03J08589
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岸本 泰司 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 連合学習 / シナプス可塑性 / 抑制性シナプス / 記憶・学習 / 海馬 / NMDA受容体 / 運動学習 / 小脳 |
Research Abstract |
研究代表者は前年度までに、野生型マウスにおける瞬目反射条件付けの様々な課題における海馬依存性を調べ、trace課題とlatent inhibition課題における学習成立に海馬が必要である事を明らかにした。本年度においては、1)両課題におけるCA1およびCA3両野のNMDA受容体ネットワークの役割、2)trace課題遂行中のマウス海馬ニューロンからの海馬場所細胞活動の役割を明らかにすることを主な目的としで実験を行った。さらに3)小脳抑制性インターニューロンの運動学習における役割も検討した。各テーマにおける主要な研究業績を以下に記述する。 (1)海馬CA1錐体細胞特異的NMDAR欠損マウスおよびCA3錐体細胞特異的NMDAR欠損マウスを用いてtrace課題およびlatent inhibition課題を検査した。その結果、latent inhibition課題の学習獲得にはCA1、CA3両野のNMDARが必要な事が示された。またtrace課題を各ミュータントマウスで調べた結果、本課題記憶の成立にはCA1野のNMDARが、それに対し記憶の消去にはCA3野のNMDARが必要である事が詳らかになった。この知見は同一分子が海馬の発現場所によって、記憶の獲得と忘却という正反対の過程に必須である事を明らかにした点で非常に興味深いものと考える。 (2)海馬依存性学習であるtrace課題をマウスに行わせながら海馬ニューロンから電気的記録を取得するシステムを構築した。本システムを次年度以降ミュータントマウスに適応する予定である。 (3)ある限局した小脳皮質でゴルジ細胞を欠失させたミュータントマウスで小脳依存的学習であるdelay課題を調べた。この実験により小脳抑制性神経回路が条件反射表出のタイミングに積極的に関与している事を実験的に証明することができた。
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