2004 Fiscal Year Annual Research Report
西太平洋域における海生介形虫類(甲殻類)の進化学的研究
Project/Area Number |
03J08594
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 源吾 金沢大学, 自然計測応用研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 介形虫 / 西太平洋 / 機能形態学 / ノープリウス眼 / 古生物学 / 幾何光学 |
Research Abstract |
介形虫類の進化学的研究について,本年度は介形虫類の眼の進化に着目した.標本を顕微鏡下で抽出して切片観察を行い,パソコン上で形態データを取得しデータの解析を行った.眼の形態を簡単なモデルで近似し,幾つかのパラメータを指定し,光線追跡による集光能力の評価を行った.その結果として次の成果を得た.1.モデルについて形態空間解析を行ったところ,集光能力はレンズの外側の曲率とレンズ厚に大きく影響され,レンズが厚く曲率が大きい眼ほど集光能力は高くなる傾向にある.レンズ厚が中位の場合,外側曲率を変化させることである程度集光能力を高くできるが,レンズが薄すぎると構造的制約のため外側曲率を大きくしても集光能力を高められない.2.実標本(29種)から計測されたレンズ厚,外側曲率および推定された集光能力値を理論形態空間上にプロットしたところ,モデルと実標本から求められた値がよく一致した.走光性実験をおこなった結果,実標本から推定された集光能力値と調和した実験結果が得られた.このことから,外側曲率およびレンズ厚が実際に介形虫類の眼の集光能力を大きく左右している形質であると考えられる.3.既に公表されている分子系統樹上に眼の形質状態をプロットしたところ,レンズが発達している分類群はレンズを持たない分類群から派生したと考えられること.また,レンズを持つ分類群の中で集光能力が中位の眼(MGタイプとした)が最も原始的であり,それから様々な集光能力の眼(LG1,LG2およびHGタイプ)が派生したこと.集光能力が低いタイプは収斂によるものと考えられること(眼のタイプとその産出レンジ表を作成したところ化石記録からもこれらの結果は支持された).4.集光能力を左右する形質のうち外側曲率は殻の表面装飾の発達の程度に,レンズ厚は背甲の厚さに左右されていることがわかった.このうち厚い殻の獲得は系統的制約によるものと推定された.
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Research Products
(4 results)