2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いた網膜神経回路網形成と領域特異的中枢投射の分子機構の研究
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03J08754
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
高雄 元晴 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | チロシンフォスファターゼ / マウス / 網膜 / 暗所視 / 杆体 / 双極細胞 / リン酸化 / プロテインキナーゼ |
Research Abstract |
本年度、研究計画に基づきリガンドが網膜の領域特異的に発現することがわかっている受容体型蛋白チロシンフォスファターゼζ/βの視神経の領域特異的投射と網膜の神経回路網形成への関与について、同分子を欠失させた遺伝子改変マウスを用いて受領者は検討を行った。その結果、視神経の領域特異的投射には特段の関与は認められなかったものの、網膜において暗所視にかかわる神経回路網の機能に異常が認められることがわかった。具体的には、同マウスは杆体双極細胞においてプロテインキナーゼのリン酸化を介した軸索終末部からのグルタミン酸の放出の調節機能に障害をもっていた。結果として明所視から暗所視への網膜内での回路の切り替えに支障を来していた。実際、行動学的に夜盲様の症状を示していることを現在確認している。今後、網膜の神経回路網における明所視から暗所視の切り替えの異常について電気生理学的に詳細に調べていくとともに受容体型蛋白チロシンフォスファターゼζ/βがどのようなシグナル伝達系を経てプロテインキナーゼのリン酸化を調節しているのか分子生物学的な検討を行っていく。 これまで受容体型蛋白チロシンフォスファターゼζ/βのようなプロテオグリカンが網膜の神経回路の機能調節に直接関わっているという報告はなく全く新しい知見である。しかも、明所視から暗所視への網膜内での回路の切り替えという網膜の神経回路の最も重要で複雑なメカニズムの一つにプロテオグリカンが大きく関わっているという発見は非常に重要である。 なお、受領者は、本年度海外学術雑誌1報、国内学術雑誌2報、著書2章および学会発表10件(招待講演6件)と精力的に研究結果の対外的発表を行った。また、これまでの受領者の研究成果が米国で高く評価され、米国の紳士芳名録・Marquis Who's Who in America 58th Ed.(2004年)に受領者の略歴と研究業績が紹介された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Lucas RJ, Hattar S, Takao M, Berson DM, Foster RG, Yau KW: "Diminished pupillary light reflex at high irradiances in melanopsin-knockout mice."Science. 299(5604). 245-247 (2003)
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[Publications] 高雄元晴: "概日リズムと光受容"医学のあゆみ. 204(11). 779-782 (2003)
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[Publications] 高雄元晴: "哺乳動物の概日リズム同調に関わる新奇光受容細胞と視物質様タンパク質メラノプシン"生物物理. (印刷中). (2004)
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[Publications] 高雄元晴: "素朴な心のサイエンス「錯覚する」"北大路書房. 10 (2003)
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[Publications] 高雄元晴: "素朴な心のサイエンス「見ることと分かること・視覚神経科学」"北大路書房. 10 (2003)