2003 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド蛋白質フィブリル化会合体の偏光顕微赤外分光
Project/Area Number |
03J08765
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
平松 弘嗣 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質 / ペプチド / 二次構造 / アミロイド線維 / 偏光顕微赤外吸収分光法 |
Research Abstract |
いくつかのたんぱく質およびペプチドは一定条件の下で針状凝集物(アミロイド線維)を形成する。原子間力顕微鏡や電子顕微鏡などを用いた測定から、線維の形状は太さ十数nm、長さ数μm程度であり、それを構成するたんぱく質の種類によらずほぼ類似していることが知られているが、分子構造は明らかになっていない。今年度の目標はこの点を解明する手法の開発、および解明にある。 試料にはβ_2-ミクログロブリンの#21-31ペプチド(NFLNCYVSGFH)を用いた。伸長反応と遠心分離(15,000rpm,4℃,45min)を数回繰り返す操作によりアミロイド線維配向試料を作成し、赤外顕微鏡(Nicolet, Continuum)を用いて赤外吸収直線偏光二色性を測定した。アミドIおよびアミドIIバンドにおいて逆の赤外吸収直線偏光二色性(平行二色性、垂直二色性)が観測されたことから、配向試料が形成されたことが確認できた。2つの直線偏光を用いた測定結果の線形結合から、赤外吸収スペクトルおよび差スペクトルを得た。フィッティング解析を行い、赤外吸収スペクトルに含まれる吸収バンドの波数位置および強度から二次構造の種別および割り当てられる残基数に関する情報を得た。また直線偏光二色性の解析から、それぞれの二次構造に含まれるC=O結合が線維長軸に対してどの方向を向いているか、に関する情報を得た。本手法は試料の種類を問わず適用可能である。実験結果はこの線維に「配向軸に平行(α=0°)なC=O基2残基」「配向軸から27°傾いたC=O基3残基」「ランダムコイル構造4残基」「βシートあるいはβバルジ2残基」が含まれることを示す。またTyr側鎖に帰属される1517cm^<-1>のバンドにおいてはα=90°であることから、Tyr26は構造がランダムコイル以外の部分に含まれる。この結果を満足に説明する構造モデルを提案した。
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