2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温による光阻害機構の解明:光化学系II修復系の阻害
Project/Area Number |
03J08771
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
高橋 俊一 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | カルビンサイクル / 高温 / 光化学系II / 修復系 / 光阻害 |
Research Abstract |
光合成活性は高温ストレス条件下で低下する。その要因の一つとして、高温による光化学系IIの光阻害がある。これまでに、高温によるカルビンサイクルの阻害が、光阻害の要因となることが知られている。しかし、カルビンサイクルの阻害による光阻害機構は十分明らかでない。そこでカルビンサイクル阻害による光阻害機構についてクラミドモナスを用いて調べ、以下のことを明らかにした。(1)カルビンサイクル阻害剤(Glycolaldehyde)は光阻害を促進するが、光化学系IIの光傷害速度には影響しない。(2)カルビンサイクル阻害剤の効果はルビスコ活性を欠失した変異株では見られない。(3)カルビンサイクル阻害剤による光阻害は、Q_Aの過還元によるものではない。(4)カルビンサイクル阻害により、光阻害からの回復力が阻害される。5)カルビンサイクルの阻害は、光化学系IIのD1タンパク質の分解速度に影響しない。(6)カルビンサイクル阻害により、葉緑体内のタンパク合成が阻害される。(7)カルビンサイクル阻害は、葉緑体内のmRNAレベルに影響を与えない。(8)ホウレンソウから単離された葉緑体においても、カルビンサイクル阻害剤によりタンパク合成が阻害される。(9)カルビンサイクル阻害剤の存在かでも、3-ホスホグリセリン酸(3-PGA)の添加により吸収された光エネルギーの消費を回復させると、タンパク合成は回復する。以上の知見より、カルビンサイクルが阻害された条件下で光照射を受けると、タンパク合成の翻訳過程が阻害され、光化学系IIの修復系が阻害されるため、光阻害が促進されることが明らかとなった。また、吸収された光エネルギーによる過剰な電子がタンパク合成阻害の要因となることが示唆された。現在、カルビンサイクル阻害によるタンパク合成阻害の分子機構をより詳細に解析中である。
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