2004 Fiscal Year Annual Research Report
森林生物起源の揮発性有機化合物による2次的エアロゾル生成と気候への影響
Project/Area Number |
03J08799
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松永 壮 東京都立大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エアロゾル / 生物起源 / 半揮発性有機化合物 / 2次的生成 / 大気化学 / カルボニル / ガス-エアロゾル平衡 / 放射強制力 |
Research Abstract |
今年度においては、2004年4月4日〜5月9日および5月19日〜12月18日の期間について、アメリカの国立大気研究センター(National Center for Atmospheric Research;以下NCAR)へ長期出張を行い、野外観測への参加、試料の分析、結果の解析および論文原稿の執筆を行った。また、2004年5月12日〜15日の間、都立大での集中観測にも参加した。 イソプレンの分解生成物によるエアロゾル生成・成長への寄与に着目した観測や装置の開発をこれまで数年に渡って行ってきた結果の集大成ともいえる。これまで、イソプレンの分解生成物は、エアロゾル成分には寄与しないと考えられてきたが、新しい分析法と試料採取装置を開発し、それを用いた観測を行った結果、イソプレンの主要な分解生成物であるグリコールアルデヒド、ヒドロシキアセトンおよびメチルグリオギザールが0.5〜2%程度の収率でエアロゾル成分となっていることがわかった。この収率は一見大きな値には見えないが、全球で放出されている炭化水素のうち、最大の放出量を持つのがイソプレンであることがわかっているため、イソプレンの分解生成物がエアロゾル成分に寄与することが明らかになったのは大気科学的に極めて大きな意義を持つといえる。 これまでの観測結果や、NCARの大気化学モデル計算を合わせてイソプレンの分解生成物によるエアロゾルの全球総放出量を見積もったところ、33Tg yr^<-1>(15TgC yr^<-1>)という結果を得た。これは、現在見積もられているエアロゾルの総放出量100〜260Tg yr^<-1>と比較しても、一つの化合物由来のエアロゾル放出としては群を抜いて大きな値ということができる。この結果については、Natureに投稿準備中で、今月または来月中には投稿できる見通しである。
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