2004 Fiscal Year Annual Research Report
殺人者に対する20世紀アメリカにおける法的判断と殺人物語群における解釈の比較研究
Project/Area Number |
03J08809
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
権田 建二 東京都立大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 法と文学 / リベラリズム / ピューリタン / 死刑説教 / 公開死刑 / 教条的言説と娯楽 / 個人と社会 / 殺人物語 |
Research Abstract |
今年度の前半は、20世紀アメリカ殺人物語群に関する研究論文のまとめとして、全体のイントロダクションにあたる部分を執筆した。 20世紀アメリカ殺人物語群は、アメリカの法制度を批判しているが、それらの批判は究極的には、アメリカの法思想の根底にあるリベラリズムという思想に向けられている。これまで、個々の殺人物語の批評は、この点においてはまったくふれてこなかった。その理由として、文学研究自体がリベラルな文学観に支配されているという側面があることがあげられる。つまり、文学作品とは、歴史を超越した人間の真理を探究するものであるという、非歴史的・政治的文学研究は、個々の小説作品を自律したものとみなすことで、それらが社会的言説の一部であるということを隠蔽することになったと考えられる。このような文学観においては、殺人物語群の社会・抗議小説という側面は軽視され、その結果、これらの作品のアメリカ法制度に向けられた批判が十分に検討・議論されてこなかった。本研究は、法と文学を社会的言説として比較することで、20世紀アメリカ殺人物語群がアメリカのリベラリズムを批判していることを明らかにすることを試みている。 今年度の後半はアメリカのニューイングランド・ピューリタンの死刑説教に関してリサーチを行った。殺人物語は、17世紀のニューイングランド・ピューリタンの死刑説教にその起原がある。死刑説教とは、ピューリタンの牧師たちが、罪人の死刑を見に集まってきた大衆に向けて、罪を犯すことを訓戒する目的で行った説教のことである。死刑説教は、牧師たちの側から見れば、人々の教育を目的とした教条的な言説であったが、大衆にとっては、怖いもの見たさで罪人の話を聞くという娯楽でもあった。犯罪者に焦点をあてることで、ピューリタンの牧師たちの意図とは無関係に、死刑説教は、近代的な自律した人間像の下地を用意したといえるだろう。
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