2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08827
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
樋口 貴広 首都大学東京, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 運動制御 / 歩行 / 車いす / バイオメカニクス / 知覚運動協応 / 身体スキーマ |
Research Abstract |
手動車いすの安全な利用には,車いすの大きさと環境との空間関係を知覚すること(いわゆる車両感覚)が不可欠である.これまでの研究の結果,車いすの車両感覚を獲得するためには長期の車いす利用経験が必要であり,利用経験が少ない場合,たとえ健常者であっても車幅を過小評価することがわかっている.この結果は,手にカバンや買い物袋を持つことで環境との空間関係が変わっても,瞬時に適応して安全に歩行できることを考えれば,意外な結果であった.そこで今年度は,車いすへの適応が難しい理由を探るため,歩行中に車いす利用時と同様の身体拘束を加え,狭い通過口を通り抜ける際の動作特性と眼球運動を,通常の二足歩行時,および車いす利用時と比較した.身体拘束の方法として,車いすと同じ幅の平行棒を持たせ,さらに通過口の通過時に肩の回旋が出来る条件と出来ない条件の2条件を設定した.なお実験はWaterloo大学(カナダ)Kinesiology専攻,Gait and Posture研究室にておこなった. 実験の結果,通過口の通過時に肩の回旋が出来る場合,通常の二足歩行じとほぼ同一の動作・眼球運動を示すことがわかった.これに対し,肩の回旋が出来ない場合,適応的な動作パターンの変化が見られるものの,通過口に接触してしまう場合があることがわかった.さらに車いす利用時は,通過口との接触頻度がさらに高くなった.以上の結果から,歩行中に有効な身体拘束に対する適応能力は,肩の回旋の自由度がある場合にのみ機能することがわかった.すなわち,車いすの利用時にこの適応能力が発揮されない1つの要因は,肩を回旋して衝突を回避できないという運動の拘束にあるといえる.
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Research Products
(5 results)