2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08883
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小畑 俊太郎 東京都立大学, 社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | デモクラシー / 出版の自由 / 結社の自由 / 討議 / 普通選挙 / 一院制 / 貴族 / 君主制 |
Research Abstract |
報告者は『東京都立大学法学会雑誌』(二〇〇三年七月、第四四巻第一号)にて「初期ベンサムにおける自由と統治(二・完)」を完結させて以降、前掲論文において明らかにされた処女作『統治論断片』の<popular government>の基本構想を念頭に置きつつ、フランス革命期ベンサムの憲法思想の展開に焦点を移して研究してきている。『統治論断片』において統治のpopularityは「出版」や「公的結社」の自由、「討議」、統治者の「説明責任」等によって担保されていた。それらの基本視角は革命期においても一貫して維持されているが、この時期はさらに、従来ほとんど関心の払われてこなかった統治形態が具体的に論じられることになる。 革命期初期、とりわけ1789年から90年にかけてベンサムは、フランスに対して、女性や無産者を含めたほぼ「普通選挙権」、「毎年選挙」、「秘密投票」をして「一院制」といった「ラディカル」な憲法論を展開すると同時に、それらを原理的に基礎付けるために、「一般的利益」、「政治的平等」、そして「デモクラシー」といった基本概念を功利主義的概念から精緻化していった。報告者は、これらの議論は初期ベンサムの基本視角からの延長線上に位置付け得ると考えている。 しかしながら、ベンサムは他方で、「君主制」を容認したこと、「ラディカル」な憲法論を展開した時期は短いこと、「恐怖政治」の進展と共に政治改革に対して否定的態度を取るに至ったことなどから、この時期のラディカル・デモクラシー論をどこまで真摯なものとして見なし得るかということは、ベンサム研究の最も大きな争点を形成しており、いまだに決着がつけられていない状況にあると言ってよい。報告者は、現在、1788年から95年にかけてのベンサム憲法論の変遷をたどると同時に、その基底にある理論枠組を杭出するなかで、デモクラッドベンサムを第一次資料において確認出来るかどうかを検証するために、これまで未検討であったこの時期のベンサムの緒備考を詳細に検討してきているところである。
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Research Products
(1 results)