2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J08883
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小畑 俊太郎 東京都立大学, 社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベンサム / フランス革命 / 人民への訴え / 拒否権 / 選挙権 / 自然権 / 議会改革 / 植民地 |
Research Abstract |
本研究の課題は、フランス革命期におけるベンサムの政治思想、とりわけ憲法=政体論の成立展開過程を、フランスとイギリスのコンテクストの中で歴史的に再構成することにある。 その結果、ベンサムの提言は、以下の三つの段階に分類することができた。第一は、1788年秋から89年初頭にかけて、『フランス』と『三部会構成の考察』が執筆された時期である。ベンサムはこの時期、イギリスの国制を規準にして、フランスの貴族階級を批判する一方、「財産の安全」の観点から多くのクラスを選挙人から排除した。第二は、1789年秋から90年末までの、「政治的急進主義」にコミットして、『権力の分割』と『フランス憲法典草案』を執筆した時期である。89年8月末より開始された憲法制定に関する審議は、議会の独走への歯止めをめぐって展開したが、ベンサムは、「権力の分割」ではなく「人民への訴え」を保障する制度によってこそ可能になるとする<停止的拒否権>論者の影響の下、一院制と普通選挙権を主張した。さらに、ここで得た見解をもとに、今度は、二院に分割されたイギリスの国制を批判し、議会改革論を提起するに至った。第三は、1791年夏から95年秋に至る、革命への批判を次第に深化させていき、『大言壮語のナンセンス』を執筆した時期である。92年9月の群衆による王党派の虐殺、93年1月の国王の処刑、続く2月のイギリスへの宣戦布告は、革命に対してなお残っていたベンサムの親近感を完全に消滅させた。ここにおいて、これまで展開してきた憲法=政体論や議会改革論は後景に退いたのである。 以上の経験を通じて、ベンサムは、以後、政治的主体としての国民創出の条件を探るべく、社会問題=社会改革へと関心を転じ、その上で改めて「政治的急進主義」を掲げて、イギリスの政治改革論を展開することになるのである。 本研究にもとづき、イギリス哲学会関東部会第74回研究例会(2004年12月)において報告し(「フランス革命期ベンサムの<政治的急進主義>」:報告要旨は『イギリス哲学研究』28号2005年に掲載)、さらに、論文にまとめたところである(「フランス革命期ベンサムの政治思想」『東京都立大学法学会雑誌』第45巻第2号151-210頁、2005年1月)。
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Research Products
(1 results)