2004 Fiscal Year Annual Research Report
凍結乾燥タンパク質のガラス化による安定化に影響を及ぼすガラス状態の特性について
Project/Area Number |
03J08958
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
川井 清司 東京海洋大学, 海洋科学部, 特別研究員DC-2
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Keywords | ガラス転移 / ガラス転移温度 / エンタルピー緩和 / トレハロース / タンパク質 / 凍結乾燥 / 貯蔵安定性 / 非晶質 |
Research Abstract |
従来、タンパク質を二糖類などの形成するガラスマトリクスに包埋すると分子運動が抑制される為、長期安定であると信じられてきたが、近年では例外も多く報告される。本研究では分子運動の抑制されたガラス状態で何が起こるのかを調べ、タンパク質の貯蔵安定性との関連について検討した。 まずガラス状糖類(グルコース、マルトース、スクロース、トレハロース)単成分における分子運動性をエンタルピー緩和速度の視点から検討した。エンタルピー緩和量の経時変化から緩和速度を求める際に従来適用されてきた解析モデルではエンタルピー緩和に伴う構造緩和と緩和時間との対応を説明できない事を指摘した上で、この問題を解決した拡張モデルを新たに提案した。その結果、ガラス状態のエンタルピ-緩和と構造緩和との対応を考慮した緩和時間解析が可能となり、ガラス状態における分子運動性の定量的把握と、貯蔵安定性に関する予測の可能性に道を開いた。 一方、より複雑なタンパク質-水複合系におけるガラス転移を断熱型熱量計によって詳細に調べた。その結果、複数のガラス転移が見出され、ガラス状態内部におけるタンパク質と水との相互作用の違いによって生じる分子運動性の不均一性を明らかにした。 上記研究の応用として、アミノ酸-還元糖-ガラスマトリクスからなるモデル系タンパク質食品を用い、ガラス状態下におけるメイラード反応速度を調べた。分子運動の抑制されたガラス状態においてもアミノ酸-還元糖間のメイラード反応は速やかに進行する事、水素結合形成に優れたガラスマトリクスほどメイラード反応速度を抑制する事が明らかとなり、上記結果と同様に、ガラス状態内部における分子運動性の不均一性によってガラス状態下においても反応が進行する事が示唆された。
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Research Products
(5 results)