Research Abstract |
必然性概念に関する論理的表現や論理推論を扱う論理学である様相論理学に対する代表的な意味論としてKripkeらによる可能世界意味論が知られている.それによれば,ある可能世界αにおいて「Aは必然的である」が真であるのは,αと到達可能性Rをもつ全てのβで「Aである」が真であることと解釈される.本研究では,この必然性解釈を構文論的に捉えなおし,(□A)^*=Vy(xRy→A^*)なる解釈を考え,この解釈に基づいた様相論理と古典論理との対応定理を,証明構造に関して示した.本年度は,基本的な様相論理であるS4,及び,その部分体系に対して(しかも,その述語論理版に対して),そのような対応定理を証明論的に示した.この結果は,S5に関するMintsの結果以来,36年ぶりの解決であった.この結果を示す論文は,論理学の指導的な国際雑誌であるThe Journal of Symbolic Logicに掲載された.(2003,68巻,4号)また,この過程で,本橋信義による結果(1972)の存在が知られた.それは直観主義論理と古典論理との同様な対応定理であるが,それは,証明可能性のレヴェルにおける対応であった.これは,証明構造に関する我々の結果よりも弱いものである.しかし,本橋の方法は,S4系統だけでなく,S5系統の様相論理に適用できることがみてとられた.現在は,S4,S5両系統の様相論理に関する対応定理を,本橋の方法により統一的示すことを目指した論文を準備中であるが,これは,証明可能性に関する対応しか示せないという短所を持つ一方,今までは個々独立にしか研究されてこなかったS4,S5両系統に関して統一的に示せる,という利点がある.
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