2003 Fiscal Year Annual Research Report
フランス革命期地方都市の政治と権力〜ルアン市の「政治的現実主義」の諸背景
Project/Area Number |
03J09000
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高橋 暁生 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フランス革命 / ルアン / 中央集権化 / 国民国家 |
Research Abstract |
平成15年度は、以下の内容を持つ研究論文の執筆に専念した。 1789年に勃発したフランス革命は、フランス近代を語る上できわめて重要な画期とされる。そこには様々な意味が込められるが、中でも「国民」をその基本的単位とした中央集権的近代国家の確立を考える際、革命はほとんど決定的な意味を持っている。私の基本的な問題意識は、中央権力の意志が地方においてもほぼそのまま貫徹されるような近代的中央集権国家はそもそもどのような条件の下成立しうるのかという点にあった。当該論文では、革命の10年間、中央・パリの権力に対して様々な反乱・反抗を引き起こした諸地方・都市とは逆に、中央権力との協調関係を狭義の政治信条などを犠牲にしつつ維持し続けた地方大都市ルアンを取り上げ、この都市で権力を有した人々の行ったこの選択の背景を考察した。その結果、従来考えられていたような共和政か立憲君主政か、ジロンド派支持かモンターニュ派支持かといったよりな政治信条ではなく、その地域固有の様々なコンテクスト、中でもルアン市にとっては穀物供給という社会経済的なファクターが、この都市の政治的選択に決定的な役割を果たしたことを明らかにした。また、当該論文の第二篇においては、革命期ルアンの政治指導者層、およそ330名についてプロソポグラフィの分析を行い、ルアンでは、革命の激動にも関わらず、基本的には繊維産業に関わる大商人層が最大かつ一定のヘゲモニーを10年間維持し続けたことを示した。先に示した穀物供給においても彼ら大商人が重要な役割を果たしたのであるが、それ以上に、このルアンという都市の政治的選択を規定づける他のファクターを今後探求する上で重要な手がかりを手にしたことになる。 以上のような内容を持つ当該論文は、400字詰め原稿用紙にして、1,800枚超に上る量であるため、来年度以降、この中から3,4本の論文を学術雑誌に投稿、発表していく予定である。以上が平成15年度特別研究員奨励費を用いた結果としての実績である。
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