Research Abstract |
本研究課題は,民間生命保険の役割とは何か,またその限界とは何かという本質的な問題,つまり,官民の役割分担や福祉のあり方,保険会社の経営倫理の問題へと広がる。このような問題意識を,大学院の修士課程時より,研究の大きな柱としてきた。今後の研究活動においても,それは変わらないが,「遺伝子検査と保険」(『FSAリサーチ・レビュー2005』,2005年12月)や,「保険における官民の役割分担をめぐる一考察-危険選択における遺伝子検査結果利用に関する議論をもとに-」(『保険進化と保険事業』第4章,慶應義塾大学出版会,近日刊行)を1つの区切りとして,研究の対象領域を広げていくことも課題としている。 具体的には,医療保障や介護保障に関する,各国の社会保障制度や民間保険の現状などを概観し,それらをまとめた研究成果をもとにして,「医療保障分野における官民役割分担論」(『保険研究』第57集,2005年8月)を作成するなど,研究領域を拡充している。また,医療保障分野において,近年,保険会社が実際に提供している商品の特徴や課題についても考察を進めており,2005年7月には,財団法人生命保険文化センターで行われた保険学セミナーにおいて,「医療保険の商品開発をめぐる一考察」というテーマで報告を行った。それらの成果として,「医療保険をめぐる商品開発の動向」(『医療保険のフロンティア(仮)』第4章,勁草書房)が,近日刊行される予定である。 今後は,さらに研究を深め,銀行窓販など販売チャネルのあり方,説明責任なども含めた販売政策上の問題や消費者教育における問題,保険会社の経営倫理などについても,医療保障分野を中心に考察していく所存であり,それらの成果を2006年9月の日本保険学会関東部会や,2007年10月の日本保険学会大会などで報告予定である。
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