2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本の「地方」「植民地」の創出をめぐるアイデンティティ・ポリティクスに関する研究
Project/Area Number |
03J09034
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木名瀬 高嗣 慶應義塾大学, 総合政策学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / 近・現代史 / 日本 / アイヌ / 植民地主義 / 文化政策 / マイノリティ / アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究においては、近代日本の「地方」と「植民地」の創出過程において周辺に置かれた人々をめぐる自己/他者認識(=アイデンティティ)の形成に関する調査と考察を、一貫してアイヌ民族を中心的な事例としておこない、中心と周辺(=「日本」と「アイヌ」)の2つのカテゴリー間における「中間的」な自己/他者認識の様相を主な検討対象としてきた。最終年度にあたる本年度は、理論的な検討や他地域との比較を含み込むことによって方法論的視座を固めることを目指すと同時に、アイデンティティ・ポリティクスの具体的な様相に関するデータをより深化させ、調査データの体系的な提示を図ることに力点を置いた。 前者の点については、前年度に進めた表象とアイデンティティをめぐる権力の問題に関する諸理論についての文化人類学的な見地からの検討、および小笠原諸島と樺太に関する(主に戦前期までの)情報整理を引き続き進めるとともに、近現代日本における社会・文化政策や「日本人」論・「日本文化」論などの文化言説についての検討も行った。また後者の点については、前年度から開始した鳩沢佐美夫というアイヌ個人によって1950〜70年代初頭にかけて行われたローカルな文学活動を中心としたアイデンティティ実践に関して、北海道平取町に現存する文書資料(未公刊や新発見のものを多く含む)の整理・体系化を現地の協力者とともに進め、それらのデジタル入力作業を行った。 これらをある程度接合した成果としては、日本文化人類学会(5月)において口頭発表を行ったが、その後の研究成果をも踏まえた雑誌投稿論文を準備中である。また、鳩沢佐美夫文書に関連しては、資料解題を含む雑誌論文の発表を1度行ったが、文書資料のデジタルファイルについても、公開に支障のない部分をDVD化する段階までを完了しており(3月下旬現在)、今後は他の研究者が活用し得る形で公表する予定である。
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Research Products
(1 results)