2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本の「地方」「植民地」の創出をめぐるアイデンティティ・ポリティクスに関する研究
Project/Area Number |
03J09034
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木名瀬 高嗣 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / 近・現代史 / 日本 / アイヌ / 植民地主義 / 文化政策 / マイノリティ / アイデンティティ |
Research Abstract |
3年間の研究期間のうち1年目にあたる本年度は、研究代表者がこれまで北海道のアイヌ民族を事例として行なってきた研究成果を整理しつつ、日本の「地方」および「植民地」におけるアイデンティティ・ポリティクスという包括的なテーマへと接続していくための調査計画の基礎整備を中心に行なった。 具体的には、「北海道旧土人保護法」に象徴される近代日本の対アイヌ同化政策を通じたアイヌ社会の構造変化と、1970年代頃からアイヌ復権という動向へと結実していくアイヌ側のリアクションについて、これまで北海道平取町を中心に行なってきたフィールドワークおよび文献研究によって得られたデータ(本年度も同町の生活体験者に対し新たなインタビューを行なった)を整理することに加え、札幌・旭川・東京といった都市部における動向について、図書・新聞記事などの新たな資料収集およびインタビューを行ない、それらデータの検討・考察を行なった。その結果、<同化>対<差異化>あるいは<抑圧>対<抵抗>といった二元論的構図によっては捉えられない「中間的」な自己/他者認識の様相が、為政者側・アイヌ側の双方において相互的に展開してきたことが一層浮き彫りとなった。その研究成果については、口頭発表を2度(現代人類学研究会[2003.11.29、於・東京大学]、和光大学表象研究会[2004.2.20、於・和光大学])行なったが、雑誌論文については投稿準備中の段階にある(3月下旬現在)。 なお、この二元論的枠組みの超克は、アイヌ民族に限らず、近代国家の形成過程において周辺諸地域がもつ差異/多様性の社会文化的布置を考察する上で重要な理論的課題であるが、その具体的な比較考察の対象として、小笠原諸島の国家統合過程に関する基礎的な文献資料調査を行なった。これについてのフィールドワークを含む本格的な検討・考察は、次年度以降の課題である。
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