2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本の「地方」「植民地」の創出をめぐるアイデンティティ・ポリティクスに関する研究
Project/Area Number |
03J09034
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木名瀬 高嗣 慶應義塾大学, 総合政策学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / 近・現代史 / 日本 / アイヌ / 植民地主義 / 文化政策 / マイノリティ / アイデンティティ |
Research Abstract |
前年度までにおこなった近・現代のアイヌ民族を中心とした考察から浮き彫りとなってきたのは<同化>対<差異化>あるいは<抑圧>対<抵抗>といった二元論的構図によっては捉え切れない「中間的」な自己/他者認識の様相が相互的に展開してきたことであった。本年度はその理解を踏まえ、近代日本国家の形成過程において「地方」および「植民地」という周辺諸地域がもつ差異/多様性の社会文化的布置とアイデンティティ・ポリティクスに関し、具体的な事例データの蓄積に上積みを図りながら、同時にそれらをより包括的な検討の場に接続していくための理論面における整理に力点を置いた。 その理論的研究としては、ポストコロニアル理論、サバルタン研究、カルチュラル・スタディーズなど、表象とアイデンティティをめぐる権力の問題に関する諸理論の有効性について、文化人類学的な見地から整理をおこなった。これら諸理論の観点からアイヌ民族に関する事例を検討した成果については、日本民俗学会における口頭発表(10月)および2度の雑誌論文発表をおこなった。 また事例研究としては、同化政策過程におけるアイヌ民族の内面について考察するための聞き取り調査を北海道・平取町において引き続き進めるとともに、当地において活動した作家・鳩沢佐美夫(1935生〜1971没)というアイヌ個人のアイデンティティ実践に焦点を当て、前年度までの現地調査によって所在が明らかとなった未公刊資料の整理および関係者への聞き取り調査をおこなった(8・10・11・12月)。これに加え、'北海道のアイヌ民族との比較考察対象として、小笠原諸島および樺太の国家統合過程に関する文献資料調査、および小笠原父島地域に関する予備的な現地調査(3月)を実施した。これらの調査は次年度も継続しておこなう予定である。
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Research Products
(2 results)