2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09084
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
葛西 伸哉 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メゾスコピック系 / 遍歴電子強磁性金属 / Aharonov-Bohm効果 |
Research Abstract |
近年、強磁性金属における量子伝導機構について関心が高まっている。強磁性体はスピンという内部自由度を持っているために、非磁性金属には現れないような、新たな量子現象が期待されている。理論的には様々な提言がされている反面、実験的にはほとんど研究が進んでいない。本研究では、強磁性体における量子伝導機構について調べるために、強磁性金属(Ni、FeNi)で直径500nm程度のリングを作製して、Aharonov-Bohm効果の観測を試みた。 Niで作製したリングでは、磁気抵抗効果に強いノイズが重畳して、Aharonov-Bohm効果の観測はできなかった。一方でFeNiでは比較的きれいな磁気抵抗効果の振動を観測することができた。いくつかの試料について測定をすることによって、磁気抵抗の振動周期はAharono-Bohm効果から期待される振動周期に一致することを確認した。 さらに詳細な知見を得るために、Aharonov-Bohm効果の温度依存性について調べた。T=1K付近から温度を低下させることにより、振動振幅の強度は明瞭に増加した。その温度依存性はT^<1/2>であり、熱拡散長が支配的な役割を果たしていることが明らかになった。また、振動強度から評価される位相相関長L_φ=√<Dτ_φ>は500nm程度であり、温度によらずほとんど一定である。 FeNi合金における位相相関長は非磁性金属における位相相関長(〜1-2μm)に比べてかなり短いが、位相緩和時間についてはほとんど同じオーダーである。このことは、強磁性金属におけるAharonov-Bohm効果の強度は単純に拡散定数によって支配されているということを示唆している。 以上の結果について、International Conference on Magnetism(2003,Rome)、日本応用磁気学会(2003,大阪大学)、日本物理学会(2003、岡山大学)において講演を行った。
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Research Products
(1 results)