2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J09138
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
権 永詞 慶應義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 老い / 高齢化 / 近代化 / 個人化 / 社会保障 / エイジング / 不安 / ヒューマンセキュリティ |
Research Abstract |
本年度の研究実績の概要は次の2点である。 1、加齢に伴い生じる社会的、文化的課題の表現様式の変容に関する分析 2、政策アジェンダとしての高齢化とヒューマンセキュリティ概念の分析 第1の点に関しては、近代化が高度に発展した社会においては、社会問題の表出の仕方が変容するという再帰的近代化論の知見に基づき、加齢に伴い生じる課題を個々人が感じる不安の表現から理解することの必要性について理論的な分析を行った。これまで、「老い」が抱える問題は、地域や家族、あるいは「老人・高齢者」といった社会集団の持つコードを通じて認識されてきた。しかし、伝統の解体と個人化の進展することで、加齢に伴う課題の多くが、集団的な問題ではなく個人的な問題として表現、認識されるようになっている。そのため、個人が感じる不安をいかに社会的な課題として問題化するか、ということが新たな政治的課題となることを検討した。 第2の点に関しては、上記の理論的検討を背景に、高齢化という政策アジェンダに対するヒューマンセキュリティ概念からの接近についての分析を行った。高齢社会への政策的対応は、その多くが社会保障制度の整備、運用といった視点からなされてきたが、近年では高齢者の多様性への注目が、行政が提供する画一的なサービスの限界を問題化している。これは、ニーズに応じたサービスの提供を実現するための政策工学的な課題であると同時に、社会保障制度は何を達成することを目的とするのか、というより根本的な政治的課題を含んでいる。ヒューマンセキュリティ概念を導入することによって、高齢化する社会のなかで人間が生活を安定化させるために何を必要としているのか、その達成をいかに支援することが可能であるのかを、特に所得の保障では還元されえないものとして検討した。
|
Research Products
(2 results)