2004 Fiscal Year Annual Research Report
構造制御した複合金属クラスターの電子物性の解明とサブナノ触媒への展開
Project/Area Number |
03J09152
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小安 喜一郎 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | クラスター / 電子状態 / 負イオン光電子分光法 / ケイ素 / 半導体 / 遷移金属 |
Research Abstract |
本年度は,ケイ素(Si)に遷移金属(M)をドープすると多量に生成するSi_<16>Mを中心とした複合クラスターを研究対象とし,電子状態と幾何構造の検討からクラスター生成における安定性について研究をすすめた。 第1に,複合クラスターの生成分布が電荷,および金属の価電子数によって変化することから,価電子数の影響について検討した。中性で特異的に多く生成するチタン(Ti)をドープしたSi_<16>Tiに対して1電子を受容しやすいフッ素を反応させたところ,Si_<16>Ti・F^-に対して閉殻電子配置を示す光電子スペクトルが得られた。このことから,特異的に多量に生成するSi_<16>Tiは中性で閉殻電子配置であることを明らかにした。 一方,電子不足系に対する1電子の供与によっても閉殻電子配置を達成するため,価電子が1つ存在するアルカリ金属や銅と複合クラスターを反応させることを目的とし,生成源改良のための設計・製作を行った。アルカリ金属の場合はヒーター加熱が可能な約300℃で蒸気になるため,加熱型の噴射バルブ用へと改良した。また,銅など,ヒーター加熱では反応に十分な蒸気圧が得られない金属に対してはレーザー蒸発法を拡張して,さまざまな3成分複合クラスターを生成できるようにした。 第2に,金属内包構造について検討した。3d遷移金属と同等の価電子構造を有するが原子半径はさらに大きい,4dおよび5d遷移金属を用いたSi_nM複合クラスターを生成させたところ,金属の半径が大きい場合には特徴的な生成分布が現われないことがわかった。そこで,Siよりも半径が大きいゲルマニウム(Ge)を用いた複合クラスターを生成させたところ,半径が大きい金属まで内包できることがわかった。 以上のような,複合クラスターが特異的に多く生成する要因についての知見から,3成分クラスターを含めたさまざまな種類の安定な複合クラスターを生成させることができるようになった。さらに今回,光電子スペクトルにおいて高エネルギー側のノイズが強調されるという問題点に対し有意なスペクトル形状を抽出する手法を開発した。これにより,材料化を念頭においた複合クラスターの反応性や基板蒸着での電子状態変化について高エネルギー側の電子状態まで議論することを可能とした。
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